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第2回『Swan Lake』/Live at YBT vol.1 開催記念 遠藤律子ロング・インタビュー

船劇場の修繕記念として6月14日のライブに出演する遠藤律子ピアノトリオより、ジャズピアニストの遠藤律子さんのインタビューをお届けします。

前回は遠藤律子さんのキューバでの衝撃的な体験をご紹介しました。

宗教儀式「サンテリーア」が律子さんの音楽観を大きく変えてしまったことがとても印象的でした。後々ご紹介することになるのですが、律子さんは「サンテリーア」と横浜ボートシアターの演劇を重ねるという興味深い視点をお持ちです。

さて、今回は遠藤律子ピアノトリオがJAZZ JAPAN誌2021アワード高音質ソフト部門最優秀賞を受賞したアルバム『Swan Lake』についてお話しいただきました。このアルバムは、全曲クラシックのテーマメロディを使用したコンセプトアルバムです。私が聴かせていただいた限りでは、クラシックのジャズアルバムとしてはちょっと異色……というか、かなり素直なアレンジだと感じたので、その理由がどこにあるのかを知りたくて、お話を聞きました。

『Swan Lake』はジャズがクラシックの根っこを引きちぎって自分のいいように料理するようなスタイルとは真逆の、いわばクラシックのメロディにジャズが寄り添っているような、クラシックに対する愛情と敬意に溢れたアルバムです。インタビュー本文でクラシック好きの方が抵抗なく聴けるジャズアルバムだという話が出てきますが、逆にジャズやポップス好きの人からは、クラシックのメロディの素晴らしさを再認識するアルバムなのではないかと思いました(現に私がそうであるように)。

(取材・構成/松本利洋)

『Swan Lake』

遠藤律子流「クラシックのジャズアレンジ」

 松本:一つ思ったのは、ジャズとクラシックが混ざりきってないのが面白いのかなと。ジャズにすごく寄せたクラシックのカバーとかあったりするじゃないですか。そういうところまではやってない、ある意味では、すごく素直に……

律子:そうそう。みんなにテーマを「知ってるね」って言ってもらいたいから。

松本:それをそんなに変えないでやってるっていうのが特徴だなと思う。クラシックではないけど、形としてはジャズなんだ、という。

律子:そのままでは弾けなかったからこのぐらいにしてみました、ぐらいな感じなんですよね。だからそんなにすごいジャズにはなってないと思うんですよね。ただ形は言ってみればクラシックじゃないねないよねという。あのメロディをいただいたって感じね。クラシックの素敵なメロディを、ちょっと違うリズムに乗せてやってみました、ぐらいのことしかやってないです。

フランス映画の評論家で時々NHKなんか出てくる中川さん(中川洋吉氏)の奥様なんかも、クラシックしか聴かないの。でも、私のCDを中川さんが買ってくれたの。それで、うちで流したら、あら、私もちょっと聴いてみようかしらっておっしゃったんだって。いや本当のジャズはこんなじゃないよってことなんだけど、奥さんは「こんなのだったらジャズもいいわね」って。

そうやってジャズを聴き出すと、間違ってジャズファンになっちゃうかもしれないわけ。だから、このCDはとば口。クラシック聴いてた人からも、「これがジャズだったら聴いてもいいわって思った」って言われたら、何かシメシメって感じなのね。ジャズってもうちょっとディープなところがあるじゃないですか。

松本:泥臭かったり。

律子:もうちょっと難しくなってたりとか。それを最初に聴いたらその人はきっと駄目って言うけど、このメロディ知ってるし、「こんな感じだったらジャズ聴けるわね」ぐらいな感じのアレンジだけどね、あれはね。

松本:そうですね。

律子:だから、うちの女房がこんなこと言ってるよとか言って。「次はバッハをもっとたくさんやってほしいなと言ってた」とか言ってね。そういう聴き方をしてくれると、だから、いいメロディはいいメロディなんだよと。

松本:そうですね、僕もメロディといったものをすごく感じました。

律子:「いいメロディはいいメロディなんだよ」ってことをやったと、ジャズミュージシャンとして。私は「クラシックをちゃんと弾いたことがございません」っていう立場として。ちゃんと弾いたら、どっちかっていうと下手なクラシックの人になっちゃう。「あんた大学どこ行ってたの」「どこも行ってないの駄目じゃない」みたいな話になっちゃって。そういうのじゃななくて、子供のとき好きだったんだもん、みたいな。前のCDには月光とか入ってるんだけど。そのメロディが好きだったんだもん。

松本:なるほど。

律子:だから、そういう意味で言うとなんか、聴いてくれる方が増えたかもしれないなと。かといってジャズじゃないかっていうとジャズなんですよ。

松本:そうですね、テーマがあってアドリブがあって……

律子:どう見たって形がジャズ以外のなにものでもなく、フュージョンでもなく、ジャズなんですよね。

松本:面白い立ち位置だと思います。

律子:だんだん自分っていいのかも、とか急に思っちゃたりして(笑)松本さんに何か、何かいいこと言ってくれちゃったなみたいな。嬉しいな。よくそんな風に聴いていただいてありがとうございます。

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