第2回『Swan Lake』/Live at YBT vol.1 開催記念 遠藤律子ロング・インタビュー

メロディに新たな命を吹き込むアレンジ

松本:メロディの可能性っていうのを感じました。

律子:へー可能性。

松本:ていうのは多分メロディに対するアレンジの可能性ってことなのかもしれないですけど。メロディに対して、例えば「白鳥の湖」だったら、例の有名なメロディに対してバンドがガーッていくところがあるじゃないですか。そういうところへの持って行き方みたいなものっていうのが、「このメロディってこういう可能性があったんだな」っていうのをすごく感じました。

律子:多分私はアレンジしてるときに、自分がダンサーになりたかったっていうのがあるから、リズムがどうなるかなってことをまず考えてるわけなの。

だから、白鳥の湖はファンクだよね。それがね、私のお知り合いの方のお嬢さんが結婚したときに、明治記念館という由緒あるところで結婚式やって、私にピアニストとしてそこの宴会で弾いてと頼まれて行ったら、そのお嬢さんはピラティスだとかヨガとかダンスをやってる人。旦那もジャズダンサーだったわけ。だから、お客さんはダンサーがたくさん来てて。私が弾いたら、その後、お友達たちのお祝いのダンスがありますから、っていうんで振袖着たお嬢さんたちが出てきて、「白鳥の湖」をファンクで踊ったの。なんか、「白鳥の湖」ってかっこいいなとその時思って、「これ、いつかトリオでやりたいな」と思って。

クラシックの曲って元々そういうリズムじゃないんだけど、他の曲だったら、「例えばこれはルンバでいける」とか。これはこれではめられちゃうわけ。それでもう出来上がりなわけ。コードは後でどうにでもなる。(肝は)リズムですよね。だからそこでぐわっとなるのは、そこでなるようになってる訳。ファンクだから。悲しいメロディに対して、絶対こういくよね、3人しかいないけど、3人で必死になって。そこが燃えるところですよね。だからレコーディングのときも何回も録ったんだけど、ここが盛り上がったからこれにしようって決めた。いろいろ細かいところを言えば難があるんだけど。他にもうちょっと上手にみんなが演奏できたのはあるんだけど、いやこれ、ここ火がついたからこれにしよって。それは松本さんが多分そこだって気がついてくれたんだと思うんだけど。そういうことって大事ですよね。その肝みたいなね。だけどさ、毎回何回もライブで演奏してると、そうならないこともあるんですよね。なんかかすっちゃうことって。なんかクールに通り過ぎちゃったとかさ。

松本:なんか気分乗らないで、形だけになっちゃうみたいな……

律子:それが恐ろしいんだけど、みんなそうですよね。クラシックだって何だってほら、お芝居だって何だって盛り上がるはずだけどちょっと通り過ぎちゃったなとか、今日は行ったなとかね。今日はちょっとしつこかったなとかね。何回も見てるファンっているじゃない。「今日はちょっと……」とか、わかっちゃうようなお客さんね。そこがなんか水物で楽しいんじゃないかしら。で、あのビル・エヴァンスっているじゃないですか。あのすごい人。すごい人なんだけど、最近あの人のアルバムでボーナステイクがついてることがあるの。私はいらないと思ってるんだけど(最初に出たアルバムは)いいテイクを選んでるわけじゃない。なのに違うテイクをボーナストラックにくっつけてる。そうすると意外とあんな巨匠がつまらない演奏してんの。だからそんなのはつけない方がいいじゃない、マニアは全部欲しいだろうだけど。そうやって聴くと、そうかこんなにすごい人もなんかちょっとかすってる演奏してるんだ。ほとんどアドリブも同じっぽいんだけど、やっぱり(オリジナルのレコードで)使ってるやつの方がいいよねって。

松本:なるほど。

律子:やっぱぐっとくるものを選んでる。こっちもうまいんだけど多分こっちで。だからそうなんだ、こんな偉い人もこんななんだって。だからそういうもんなんじゃないか人間って、何回も同じことできないっていうか。

松本:ボートシアターの方の言い方だったりするんですが、「いかに新鮮さを保つか」みたいな。

律子:あ〜、お芝居は本当に決まったことを毎日やるもんね。ジャズはまだね、アドリブで何かできるけどね。どうするんですかね。今日出会ったみたいにやんなきゃいけない。しかしちょっと慣れなきゃいけないしね。最初がいいのか……でも最初きっとボロボロになってるかもしんないし……やっぱり初演が一番いいのかな?

松本:多分、そういうわけでもないですね。ボートシアターの題材で言えば、結構難しいのが多いから、最初で全部掴みきれてないことが結構多いんですよ。

律子:お客さんとしては、最初しか見てない人もいて、それなりにいいと思ってるかもしれない。

松本:そうですね。

律子:こう、レベルがきっとあるから。ある水準よりそれよりひどいことはしてない。

松本:初演がいいのは、緊張感がすごくあることかもしれません。

律子:それは見てても楽しいかも!

(第2回おわり)

遠藤律子(ピアノ・作編曲)

東京都出身。筑波大附属中学高校を経てICU中退。2002年、国際交流基金主催人物派遣事業中南米ツアーで、FRV!を率いて、コロンビア、ドミニカ、キューバ、ベネズエラ日本大使館主催コンサート出演。2002年上海&2003年北京、遠藤律子ピアノトリオ日中国交正常化30周年記念公演。2003年、遠藤律子ピアノトリオで、パリユネスコ本部ユネスコホールコンサート、在パリチェコ文化センター「ヨーロッパジャズフェスティバル」出演。2009年、国際交流基金主催事業南米コンサートツアーで、ボリビア、ペルー、ベネズエラ、パラグアイ公演、ボリビアとペルーでは、移民110周年記念公演、パラグアイでは修交90周年記念公演を成功させた。2010年には、アメリカモントレージャズフェスティバルにFRV!で出演、会場全員がスタンディングオベーションの大成功をおさめ、その後ペルーリマにて日秘会館大ホールと在ペルー日本大使公邸で、FRV!トリオのコンサートを大盛会に導く。2011年メキシコ国家的フェスティバルサンマルコス祭にFRV!トリオが招聘されてメキシコシティとアグアスカリエンテス公演。六本木CLAPS、銀座スイング、吉祥寺SOMETIME等ライブハウス、高齢者施設、美術館など様々な場所で、会場一体となって熱く楽しく盛り上がるライブを開催中。美しい作曲と喜怒哀楽豊かな演奏で、あたたかい音楽の一時を作るピアニスト。また、ジャズポピュラーピアノ&理論レッスンを開催、社会人ミュージシャンの「気楽セッション」を主宰、音楽で人と人を繋ぐプロデューサーでもある。遠藤律子ピアノトリオCD「SWAN LAKE」はJAZZ JAPAN誌2021アワード アルバム・オブ・ザ・イヤー高音質ソフト部門最優秀作品賞を受賞しました。

遠藤律子CD
遠藤律子 with Funky Ritsuco Version!-FRV!
「SUNSHINE」(日本クラウン)
「FRV!」(日本コロムビア)
「家族」「愛にあふれて」(早稲田大学ラボシリーズ)
「Will You Love Me Tomorrow?」
「Lighty My Fire」(T&Kエンタテインメント)

遠藤律子ピアノトリオ
「L’AMour est Bleu」(T&Kエンタテインメント)
「SWAN LAKE」(ティートックレコーズ)

遠藤律子スローピアノ小曲集心配しないで」(早大ラボ)
遠藤律子&小笠原千秋ユニット「SMILE」(早大ラボ)
遠藤律子ピアノ弾き語り「心を寄せて」(T&Kエンタテインメント)
Toquio Bossa Trio「Sol La Mi Mi」等6作。

遠藤律子公式ウェブサイト
http://www.endoritsuco.com
遠藤律子YouTube チャンネル
http://www.youtube.com/channel/UCrnc6LhhhDoqoSsgg-CkSig

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