80〜90年代
1970年代、横浜元町の中村川で演劇集団アトムの会が拠点にしていたのが木造ダルマ船を改造した30席ほどの船劇場。80年代にその後を引き継いだ横浜ボートシアターは、”アジア”をテーマに壮大な叙事詩を物語る祝祭劇を展開し、船劇場は異次元へ旅立つ装置として人気を博しました。
当時のスタッフには、遠藤啄郎をはじめ各界を代表する人々(衣裳家:緒方規矩子、舞台美術家:堀尾幸男、グラフィックデザイナー:杉浦康平、音楽家:矢吹誠など)が集いました。
ふね会の発足
1996年に二代目の木造船劇場が沈船したのち、市民団体「ふね劇場をつくる会(以下ふね会)」が発足し、当劇団をフランチャイズ劇団とする市民船劇場の創設を目指して市民より寄付を募り、ふね会総会での決議により鋼鉄製の艀を劇場に改装します。三代目船劇場の元となった艀は横浜回漕協会元専務理事・田中鐡雄氏より当劇団前代表・遠藤啄郎に寄贈されたものです。
2001年〜現在
三代目船劇場柿落とし
2001年、トリエンナーレ周辺企画として『王サルヨの婚礼』を新港埠頭岸壁に仮係留して上演。2週間弱の公演は全て売り切れ大いに好評を博しました。
改修工事
2005年 | ふね会基金によって船劇場入り口にプレハブ小屋を建設しました。 |
2008年 | ふね会基金によって船劇場の天井の嵩上げと窓の設置しました。 |
2008年天井嵩上げ・窓設置工事
ふね会の解散
2001年の公演後、常設の劇場にする許可が行政から下りず、2013年にふね会は解散しました。現在まで当劇団が管理、修繕等に責任を持ち、船劇場での創作・稽古や小規模の催しを内々に行い続けています。
船劇場での当劇団の創作・稽古風景
船劇場ドック入り・諸整備
2001年千葉・伊豆山造船所にてドック入り | 艀を船劇場へ改装しました。 |
2017年千葉・伊豆山造船所にてドック入り | 経年劣化の予防措置をしました。 |
2022年2月28日〜3月7日トモイ造船鉄工所にてドック入り | 浸水箇所の修繕をしました。 |
2022年5〜6月ボランティアによる甲板の塗装作業 | 船劇場や劇団のファンを募って甲板のサビ取りと塗装を行いました。 |
2023年6月26日〜7月2日トモイ造船鉄工所にてドック入り | 公に使用できる劇場化を目指し、船舶検査の事前視察を受けました。 |
2022年2月28日〜3月7日トモイ造船鉄工所
2023年6月26日〜7月2日トモイ造船鉄工所にてドック入り
公に使用できる劇場化を目指し、船舶検査の事前視察を受けるためドック入りを行いました。
上架による検査
2023年6月26日に鶴見の造船所で上架し、検査官による仮係留に向けた船舶検査の事前視察を受けました。
検査の結果、想定外の浸水が艇内に確認されました。目視ではわからないピンホールが原因のようでした。一般に運用されている解では問題にならない程度ではありましたが、人を乗せる客船に準じた扱いを受ける船劇場では、根本的 な対策が必要と指摘されました。
せっかく上架しているので造船所と設計会社と協議し、損傷部にできる範囲で補修を施し、また二重底の船底を切り開き船底の板厚を試験的に計測出来るよう12箇所に加工を施しました。運輸局から板厚は最低6mm以 上必要だと説明 されていましたが、計測した範囲では8 mmを保っており築50年以上の解としては良好な状況であることが確認できました。
いずれにせよ一般劇場として運用するには、長期的視点に立ち安全面における根本的な補修と設備の改修が不可避です。回収計画やそれを実現するための資金確保など課題は多いですが、劇団としてあえて向き合うことにしました。
当面はこれまでの制約の中での運用と成らざるを得ませんが、その間も実証実験を行い横浜における船劇場存在の周知活動に取り組みたいと考えております。 因みに、修理を施した結果、係留地へ帰還後も新たな浸水は確認出来ておりません。
2022年5〜6月ボランティアによる甲板の塗装作業
実証実験
「みんなの山下ふ頭に○○があったらイイナ」プロジェクトと連動した実証実験企画
現在、鉄製となり新山下エリアに停泊しているこの艀を様々なジャンルのアーティストが公演、発表のできる公のスペースと して運用できるようにするための準備および仕組みづくりの実証実験。
そして、その検証実績を活かし、将来的には船劇場のみならず複数の艀をダンスシアター、ライブハウス、映画館、ギャラリ ー、レストランなどに改造し、総合的にアートを楽しめる拠点を形成していく事業計画に繋げていくことを目指しています。
艀とともに港の物流を支えた臨海部の護岸に係留し、横浜の街並みと艀群を一望できる景観を作り出し、港の歴史を感じ られるスポットとして、他の街にはない観光資源とするため、市民とともにその実現を目指した都市計画であり、山下ふ頭再開発とも連携したまちづくりを念頭においています。
第一歩として、現係留地(新山下埠頭艀だまり)以外の安全に運営できる岸壁に仮停泊し、一定期間、様々な芸術を体験で きるイベントや展覧会の開催を目指します。また、そのために必要な許認可、インフラ環境整備、地域との連携などを併行 して進めつつ、実際に即した対応に必要な精度を高めるためのテスト運用でもあります。以降はこの実証実験の成果を活かし、地域の学校や商店街、各種団体が様々な企画やイベントを実施できる場となり、地元企業、行政とも連携した運営や 活用方法を築いていきます。
様々な文化が交差し混じり合い、新たな文化を育んできた歴史のある横浜であればこそ出来るプランであり、艀が国内外の アーティストの良質な芸術発信の場となり、今後のインバウンド、横浜臨海部の活性化にも繋がると考えています。
遠藤律子ピアノトリオLIVE at YBT
2022年のドック入り後、船劇場修繕記念として、関係者を集めて行った実証実験。
「みんなの山下ふ頭に〇〇があったらイイナ」第一回会議
2023年4月に、関係者による船劇場の内覧会も兼ねて、第一回会議を船劇場にて行いました。
◆報告記事(facebook)
『新版 小栗判官・照手姫』試演会
2023年6月、船劇場の観劇体験の試みとして関係者を招いて実証実験を行いました。
他の近況
国内外問わず、船劇場というユニークな場に興味を持つ人々の訪問が徐々に増えてきています。今後も 様々な分野の方々の視察を受け入れ、可能な範囲での実証実験を行ってゆきます。
T語り/仮面ワークショップ
2024年1〜3月、一般向けに行っているワークショップ。未経験者、アーティストを問わず様々な方が船劇場でのワークを体験しています。
海外アーティスト視察
2023年7月
イラクの演出家と俳優が来船し、劇団メンバーと交流を行いました。
2023年8月
イスラエルの演出家が来船し、劇団メンバーの他日本人俳優たちと交流を行いました。
フランスラジオ局の取材
2024年の劇団ワークショップの取材を皮切りに、今後の船劇場における劇団の創作を継続的に取材する予定となっています。
舞台裏の改修作業
舞台監督の嶋崎陽さんの協力により、2024年1月に船首船尾両舞台裏に整理用の棚を設置しました。今後も舞台裏の使い勝手をよくするため継続して改修を行ってゆきます。
専門技術を持っている方のご協力を仰ぐと同時に、ボランティア作業員も募集中です。船劇場を創作にとってより良い場所にしてゆきたいという思いを共有する仲間を広く募っています。
艀(はしけ)・水辺の活用例
Little Island
水上公園/アメリカ・ニューヨーク州
自然とアートの融合による総合的な体験を目指し、2021 年に 開園した水上公園。面積約9700平方メートル。桟橋の杭をモチーフとした「ポッド」の集合体により構成される。実業家の バリー・ディラー氏が2億6000万ドル出資。
https://www.instagram.com/littleislandnyc/
https://www.facebook.com/LittleIslandNYC/
Péniche Adélaïde
興行施設/フランス
最大船速10km/ 時の自走はしけ船劇場。ビジュアルアーティ スト、音楽家、俳優、照明デザイナーなどから成るアーティスト集団”b-Ateliers”により運営される。食事と組み合わせた独自 の形式の公演を行い、フランス各地を周遊している。
http://www.penicheadelaide.com/
https://www.facebook.com/penicheadelaide/
Concrete Ship
船上複合施設/セルビア・ベオグラード
第二次大戦の賠償としてドイツから寄贈された元軍用のコン クリート船。戦後一時期は水上の社宅として使用されていたが、ユーゴスラビア内戦により荒廃し水没。2015年に有志の手で引き上げられ、現在は複合施設として運営されている。
https://concreteship.org/index.html
https://www.instagram.com/betonskibrod
Asile Flottant
展示スペース・歴史的建造物/フランス・パリ
1919年石炭輸送船として誕生し、1929年にル・コルビュジェ と前川國男によってリノベーションされたコンクリート製はし け。老朽化が進むも、コルビュジェのオリジナルデザインを復元し一般公開する計画が、日本建築設計学会主導で進行中。