劇団新企画「シリーズつなぐ〈艀〉」10月6日開催!

【船劇場修繕寄付】リターン紹介 ブックカバー

劇団には古い着物生地の備蓄がたくさんあり、その端切れを使って、寄付のリターンのためにブックカバーを作っています。

かつて小栗やマハーバーラタなどでは、古い着物や帯地を使って、緒方規矩子さんが独特な衣裳を作りました。

小さな木造の船でどんなに近くからお客さんに見られても耐えられる本物の素材にこだわったという話です。

私が劇団に入った頃、もう木造船はなかったものの、小栗の再演や、現在の鋼鉄の船劇場の柿落とし公演『王サルヨの婚礼』で、そのような衣裳作りがなされました。

古い着物や帯地を使った衣裳はとにかく手間がかかります。

まず、着物の構造を知らないので解いて生地の状態にするだけで一苦労です。

手当たり次第に解いているとめちゃくちゃにこんがらがって来ます。

また古い物なので生地が弱っている場合が多く、繊細な扱いが必要です。

糸も弱っており、引っ張って抜こうとすれば切れるので、根気よく取り除いて行きます。

更に、生地を補強するため接着芯という生地を裏に貼り付けたりし、そこでようやく生地が完成し、そこから裁断、縫製に入ります。

劇団では美術スタッフだけでなく、役者も皆衣裳を縫いました。

特に裁縫が好きだったり得意だったりする人は、自分のコロスの衣裳以外もいろいろ手伝います。

私もその口でしたが、とにかく作業量が膨大で、衣裳合わせの前に徹夜で縫って泣きそうになることも。

丁寧でも作業が遅ければ「何をもたもたしてるの!」と緒方さんに怒られます。

「本当に間に合わない」と思って必死に自分の衣裳を縫っていた時、緒方さんが見兼ねて手伝ってくれたこともあり、「厳しいのと同じくらい優しいんだなぁ」と思ったりしたものです。

そうして美術スタッフの関野公子さんたちが徹夜するなどして仕上げた数々の衣裳は、多くの方もご存知の通り、大変美しいものでした。

私も幾分か鍛えてもらったことを活かし、今ブックカバーなど作りつつ、昔のことを思い出します。

そして今後この着物や帯の備蓄をどうするか。

作品全体の狙いが合わなければこのような素材は使えません。

またこれほど手間のかかる素材を扱い、膨大な作業をこなす人材も必要となります。

受け継いだ物を眺めつつ、時々思案します。

吉岡紗矢


こちらの写真は2001年船劇場杮落とし公演『王サルヨの婚礼』の時のもの。左から関野公子氏、吉岡紗矢、緒方規矩子氏です。吉岡曰く、「チョンドロビロウォ(魔物)のボディーペイントを試しているところですね。覚えていなかったですが、写真を見ると、薩摩芋をくり抜いてスタンプにしているようですね。くすぐったくて笑っているんだと思います」とのこと。

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