衣裳こぼれ話 『王サルヨの婚礼』のチョンドロビロウォ

いつも投稿をご覧いただきありがとうございます。

昨日、劇団所蔵の和服生地から吉岡が製作したブックカバーを紹介しました。(※前回記事の補足を記事末尾に付記します)

その中で衣裳製作時の話がありましたが、本日も衣裳に関わるエピソードをご紹介します。


2001年船劇場杮落とし公演『王サルヨの婚礼』仕込み時のこと。写真中でノースリーブの黒い衣裳を着たキャラクターたち(チョンドロビロウォ)の衣裳製作時の一幕です。重鎮の独創的な衣裳デザインを現実化する作業は一筋縄ではいきません。


魔的な力を表すコロス「チョンドロビロウォ」の衣裳は黒い短足に見えるパンツと、黒のノースリーブでした。

そしてパンツのベルト部分の中央に金属の輪が付いており、上衣の前側の裾がその輪に通って引っ張られ、ひだを作っています。

とてもかっこいいデザイン!と思ったのも束の間、どうやって上下の衣裳を繋げ、しかも役者が脱ぎ着できるようにするか、衣裳製作を担当していた関野公子さんと環さんと共に、作業場で頭を悩ませてしまいました。

今思えば上下を繋げた状態で上着の背中にジッパーを付けることもできたと思うのですが、確か、上衣は既にシャツ型に縫ってしまっていたように思います。

私がまず考えたのは、上衣の裾を予めまとめてしまって、ベルトの輪に引っ掛けるという案。試作してみましたが、デザイン通りのひだにならずカッコ悪いので却下。

皆であれこれ考えましたがどうしてもいい案が見つからず、かなり疲弊して日が暮れました。夜遅くなり、私は出演者だからということで帰され、お二人は作業場に泊まり込み、引き続き研究し続けました。

確か、もう本番まで時間がなかったのだと思います。

次の日作業場に行くと、お二人が満面の笑みで「できた!」と。

上衣の前側の裾を長くして、輪に通した後、上衣の裏側のヘリの広範囲にホックで留めるというもの。

文章で書くと説明が難しいのですが、とにかく素晴らしい案で、まさにデザイン通りの出来でした。

朝方に思いついたとのこと、眠気も疲れも吹き飛ぶ喜びだったと思います。

衣裳デザインの素晴らしさはダイレクトに観客に伝わりますが、それを実現するスタッフの努力もすごいものがあります。

その後、デザインを実現するための構造を考えるパタンナーという仕事があると知り、とても興味深く思いました。

製作上のこのようなエピソードは枚挙に暇がないのですが、長年劇団のものづくりに欠かせない人材であった関野公子さんのお仕事の一端をご紹介しました。

吉岡紗矢


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前回記事の補足

明確にお伝えしていなかったことが2点ありますので、念の為こちらの投稿で補足します。

  • ブックカバーのサイズは文庫サイズと新書サイズの二つとなっており、生地によってはどちらかのサイズしか作れない、とのことです。
  • ブックカバーは全て吉岡紗矢が手作りしています。たくさんのご要望があった場合、お送りする時期が遅れてしまう可能性があるのでご了承ください。
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