舞踊劇「操り剣舞」

遠藤亡き後、活動を模索する中で、今年2月に舞踊劇「操り剣舞」の試演を船劇場にて無観客で行いました。劇団で15年役者として活動して来ました奥本聡の作・振付・演出・出演作品で、彼の打ち込んでおります武術と演劇を融合させた作品です。単なる殺陣ではなく、純粋な演舞でもなく、剣と向き合う心と体をドラマと結びつけた試みです。ごく内輪のメンバーで協力し作り、まだまだ未熟な作品ではありますが、活動報告の一環として皆さまにご覧いただけましたら幸いです。

目次

スタッフ・キャスト

構成・振付・演出 奥本聡
演出・構成アドバイス・舞台装置・衣装 吉岡紗矢
音楽・演奏・構成アドバイス 松本利洋
振付協力 髙無宝良
撮影・編集 田中千里

出演 奥本聡

企画・製作 YBP(Yokohama Betsubara Prefecture)
協力 横浜ボートシアター

奥本聡からの挨拶

今回、配信いたします舞踊劇「操り剣舞」は2021年2月に有志メンバーで作成し、Web上で発表された作品です。

創作のきっかけは、2020年11月、私が小田原にある友人の田圃で行われる収穫祭へ向かった時に見た風景です。毎年訪れているはずの、その田圃から神社へと向かう道で出会った紅葉の美しさ、黄金色の秋を映し出す日光が目に入り、澄み切った空気が肌に触れ、私の心を強く揺さぶったのです。こんなにも美しい自然に、その田圃と神社に対して、毎年の収穫を報告するだけでなく自分としても感謝の気持ちを伝えたいという思いがわきがあってきました。

そこで、私が今まで体験してきたことを中心に作品を創作して、田圃と神社へ奉納することを考えました。幸い、その年は個人で取得できる文化芸術活動の継続支援事業という助成金もあり、12月の頭から吉岡紗矢さん、松本利洋くんと相談を重ねながら構想実現に向けて動き始めました。

この作品の核となっているのは、私が今まで稽古を重ねてきた武術と演劇、そして、興味を持ち続けていた民俗芸能です。

武術を演劇に取り入れると言った場合、殺陣として取り入れたり、奉納として、武術の型をそのままの演武することが多いのですが、この作品では武術の型を演劇的に崩して、振付にすることを目指しました。前半の剣舞は、日本の古流剣術である新陰流の三学円の太刀や、中国の剣術・太極梅花蟷螂拳の達磨剣をもとに、相手に”技を見えなくする”武術的な動きを、観客に“動きや表現が見える”振付にするよう工夫しながら、神社に祀られる神に憑依されていく様を描くことを試みました。

一方で、後半の舞は鬼剣舞や、記紀神話を題材にした神楽から影響を受けた振付です。子の上神社の祭神・天児屋根(あめのこやね)の記述がある記紀神話の天孫降臨の場面をモチーフに、八咫烏、猿田彦の登場から、清めの地鎮を描いています。地鎮は、鬼剣舞や修験者の舞に入っているような、踏む(へんばい)の動きを参考にしました。刀の使い方も、前半の武術的な使い方とは異なる使い方に挑戦しています。

前半と後半での振付の違いが作品のポイントの一つになっています。

劇としての演出・監修は吉岡さんに、刀の扱いや武術的な要素については、高無宝良先生(二天一流・肥後新陰流を教える是風会の主宰)からアドバイスをいただき、音楽と演奏を松本くん、映像作品としての仕上げを田中千里くん(武蔵野美術大学)にお願いして、今回皆様にご紹介する形に仕上がりました。

武術の呪術的、演劇的要素をクローズアップし振り付け、創作した舞踊劇を「操り剣舞」をご鑑賞いただけたら幸いです。

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