この度、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、一部で告知を始めていました新作公演を、以下の通り延期することにいたしました。
旧日程:2021年2月19日〜21日→【新日程】2021年6月11日〜13日
本作品は故遠藤啄郎が最後に着手し舞台化を目指した題材で、現在残されたメンバーにより創作中です。公演延期に伴い感染リスクが高くなると予想される1〜2月中の稽古も中止することにしましたが、少人数での裏方作業は継続する予定です。来年よりスタッフワークも含めた創作の過程を少しずつお知らせしてまいります。冬至を過ぎ、寒さがいよいよ募る季節、皆さまのご健康を心よりお祈りしております。
『白い影絵』〜石原吉郎「望郷と海」および詩篇より〜
歴史に翻弄され有らぬ罪名のもと重労働を課されたシベリア抑留者たち。
その一人である石原吉郎は、過酷な状況下での人間性の喪失を堕落と呼び、
被害者意識に潜む加害性を自らに突きつけ、告発を禁じた。
人間性の喪失と共に失われた「言葉」を、
戦後に痛みを伴いながら取り戻して行った石原は、
自らの詩を「沈黙のための言葉」と呼ぶ。
難解と言われる石原吉郎の詩から「声」を掘り起こし、
「影」を抽出することでみえてきたものとは。
演劇で出会う石原吉郎の世界。
公演日:2021年6月11日〜13日(2021年2月より延期)
会場:横浜ボートシアター
原作:石原吉郎
原案・題名・仮面・フィルム画:遠藤啄郎
脚本・演出:吉岡紗矢
脚本監修:玉寄長政
音楽:松本利洋
影絵・小道具:佐俣水緒、岡屋幸子
照明:竹内右史
舞台監督:三津久
出演:玉寄長政、丹下一、近藤春菜、奥本聡、岡屋幸子、佐俣水緒
制作:斎藤朋(マルメロ)+横浜ボートシアター
助成:芸術文化振興基金
あらすじ
終戦の年の冬、ハルビンでソ連兵に逮捕された石原吉郎は、
三年の未決期間を中央アジアで過ごした後、重労働二十五年の刑を宣告される。
「国家への反逆」というあらぬ罪を着せられ石原が送り込まれたのは
「枕木一本につき一人の命」と言われるバム地帯の強制収容所であった。
極寒、飢餓、強制労働により多くの人々が〈淘汰〉されていく中、
生き残った囚人たちはいつ終わるとも知れぬ収容所生活に〈順応〉していく。
汚物にまみれた拘禁車での酸鼻を極めた集団移送。
ノルマ制がもたらした囚人同士の食糧の奪い合い。
人間性の喪失と相互不信が渦巻く極限状況で石原が見た生命の本質、そして〈人間〉の姿とは?
石原吉郎 プロフィール
1915年(大正4年)静岡県生まれ。
1939年陸軍に召集され、終戦まで満洲で諜報活動に従事。
1945年ソ連に逮捕され3年の未決期間を経た後、
1949年に25年の強制労働を科され、
最も過酷な開発地域の一つであるバム地帯に送られる。
1953年スターリン死去による恩赦で帰国。
帰国後、詩の雑誌投稿で頭角を現し、処女作『サンチョ・パンサの帰郷』で1964年H氏賞受賞。
1972年、自らの抑留体験を綴ったエッセイ『望郷と海』を出版、翌年歴程賞を受賞。
1977年、急性心不全で死去。