『小栗判官・照手姫』復活上演計画について(2)『小栗判官・照手姫』は「再演」ではなく「新たに」作りなさい

『小栗判官・照手姫』復活上演計画の連載第2回目です。

重鎮からのアドバイスにより「遠藤啄郎を偲ぶ会」が『小栗判官・照手姫』の再演に変更になった、というのが前回のお話でした。大きな後ろ盾を得て企画が進み始めたのは良かったのですが、「そのうち」再演したいと思っていた大作を、これからすぐに取り掛かるとなると話が全く違います。あの舞台に必要なパワーをどうやって生み出していくのか。いや、そもそも役者の人数が全然足りない! とはいえ、『小栗』には強固な演出、素晴らしい衣裳が既に存在します。遺産の力を借りて頑張ればなんとかなるのでは、と思っていた矢先、そんな考えが甘かったことを思い知らされる出来事が……

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『小栗判官・照手姫』は「再演」ではなく「新たに」作りなさい

2023年秋に『小栗判官・照手姫』を再演することになったので当時の衣裳を使いたい旨を、緒方規矩子さんにお伝えしました。すると、

「あの作品は当時の顔ぶれで作ったものだから、そのまま再演しようと思ったって絶対にできない、やるなら新たな作品として作りなさい。衣裳も使ってほしくない」

とのこと。当時作品づくりに携わった先輩方も何人か同席しており、皆さん同意見でした。

考えてみれば、緒方さんは再演の度にいつも衣裳に手を加え、役者が変わればそれに合わせ、いつもその時に面白いと思える最善のものにしていました。今、ご自身が関われない状況で、過去の止まったままの衣裳を使われたくないのは当然です。ちなみに緒方さんは遠藤と同じ歳、現在93歳でいらっしゃいます。

衣裳も含め全体の世界観についても、時代背景や人々の思惑など、当時の必然が色濃く、時代も顔ぶれも違う今、同じ題材を扱っても違う作品になるはず、当時の形だけ真似したって力強いものになる訳がない、「ものづくりってそういうものでしょ?」というご意見に全く賛同いたします。

内容を深く掴み直し、必要があれば改変を加えるつもりで、形だけを真似するとは全く考えていなかったのですが、それにしても心構えが足りなかったと反省しました。もっと深く深く深く、作品を生み出す地点に遡らなければならないことを改めて肝に銘じました。

このような、ものづくりに対する真摯で率直なご意見を言ってくださる緒方さんを心からありがたく思いました。そして、遠藤が生きていたら同じことを言ったであろうと確信しました。

その後劇団で話し合い、恐れ多くも演出駆け出しの吉岡が、『小栗判官・照手姫』の演出の位置につくことになりました。総合監修の堀尾さんも「遠藤さんに影響されたもので構わない。頑張れよ」と応援してくださいます。

役者がまだ集まらないことに加え、「自分達で新たな小栗を」という非常に大きな責務を背負うこととなり、その重圧に潰されないための糸口の発見に至るにはしばし時間を要し、重苦しい日々を過ごしました。

そもそも、よりによって何故劇団の一番のヒット作に挑むことになったか、その発端は昨年秋の船劇場の窮状に遡り、私たちが自ら言い出したことだったのです…(続く)

吉岡紗矢

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