遠藤が『アメリカ！』を書いたのは1975年頃。
（ちなみに題名を『さらばアメリカ！』
度重なる長期の海外公演で疲れ切り、人間関係はズタズタ、
直前までの海外公演記録は下記の通り。
1971年
『人と人形による劇・極楽金魚』脚本・演出／遠藤啄郎、主催／
『ゴリラ・ゴリラ』脚本・演出／遠藤啄郎、主催／結城人形座
（フランス・ナンシー国際演劇祭二作品同時参加）
1974年
新演出『人と人形による劇・極楽金魚』『夕やけぐるみの歌』
脚本・演出／遠藤啄郎、主催／劇団「太陽の手」
（フランス・ナンシー国際演劇祭二作品同時参加、フランス、
1974年
『般若心経』
構成／太田省吾・遠藤啄郎、演出／笈田勝弘・遠藤啄郎、主催／
（バンクーバー、モントリオール、ニューヨーク、
（1974年頃の遠藤啄郎）
この頃を振り返って遠藤は言う「
そして疲弊し切った心で帰国した後、
ニューヨークの摩天楼に見た不吉なイメージ、
（1974年『般若心経』ツアー中に遠藤がニューヨークで撮影した今はなき貿易センタービル。この景色を見て遠藤は「窓はギロチン、首を切り落とす窓」と思ったという。このフレーズは『アメリカ！』の中で主人公が苦痛と歓喜の中で叫ぶことになる）
書き上げ早速某劇団に売り込むも「上演できない」と断られる。
仕方ないので別の某劇団に売り込むも、こちらも「上演できない」
そこで腹立ち紛れに押入れに放り込んでしまい、それから『
何故どこも断って来たのか、今ならわかる気がすると遠藤は言う。
当時は戦後30年、まだまだ戦争の記憶は生々しい時代。
そんな時代にあって『アメリカ！』
今なら戦争を扱った喜劇として抵抗なく上演出来るが、
作者の遠藤も忘れかけていた不遇な作品『アメリカ！』は、
ちなみににその後遠藤は演劇をやめなかった。
仮面のデザイン・製作も本格的に始め、
めでたし、めでたし！
本文：吉岡紗矢