7月1日(水)松山公演二日目

7月1日(水)松山 公演二日目

執筆者の文字色:吉岡 奥本 松本


今日はこのツアー最後の上演日。開演が19時なので、16時に劇場に入ればよい。奥本、松本、吉岡は10時半過ぎに東雲神社の下で待ち合わせて、神社にお参りし、城山に登る。

前日に詳しく打ち合わせをしておらず、僕一人早く東雲神社の前に着く。小雨が降ったりやんだりの天気だった。コンビニで傘を購入。松本くん、紗矢さんを待つ間ロープウェイ通りをふらふらとする。ロープウェイの駅には、様々なお城の写真が飾られており、それを見て時間を潰していた。

空模様は曇り時々雨。涼しく、濡れた緑が鮮やか。長い長い階段を昇る。人気もなく佇む黒い木でできた神社。合格祈願の絵馬がたくさん下がっていると思ったら、菅原道真を祀ってある神社だった。

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東雲神社ではかつて盛んに能が演じられ、現在その伝統を復活するために尽力されている方々がいらっしゃるとのこと。

上りながら、湯浅さんが高校時代毎日この坂を上っていたということが話題になった。タフなのはそのためかとかそういう結論に達したように思う。しかし、しばらくすると斜面は緩やかになり、一転上りやすくなった。雨に濡れた山の景色は不思議な爽やかさに満ちていた。薄い霧はまるで僕らを別の世界に連れて行くようだった。

目の前に見事な石垣が現れる。見晴らしのいい展望台から松山市街を一望。

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城はすぐそこだが、リフトで降りることに。プラスチック製の椅子にはベルトも無く、棒が一本付いているだけ。足をブラブラさせて、木々の横をすり抜けて降りて行く。高所恐怖症気味の奥本くんは下を見ないようにしている。怖かったようだ。

松山は都会的でありながらも、松山城、道後温泉のような歴史のある名所があり、その一方では豊かな自然もあり、海産物、野菜、果物などの食べ物もおいしく、とても魅力的な街でした。そういえば、夜中にコンビニに向う途中、大街道周辺を自転車でウロウロしている大学生風の若者集団が結構たくさんいて、やはり横浜とは微妙に違う文化があるのだな、と興味深く思いました。

山を降り、東京で舞台仲間だったダンサー・木室陽一さんが働いているレストランに行く。木室さんは現在近くの中島でみかん栽培をしながら踊っているとか。昨夜は私たちの舞台を観に来てくれた。松本くんは政大夫さんと今後の音楽活動の打ち合わせと稽古があるため帰り、代わりに綾香くんとレストランで合流。ちなみに春菜さんは昨夜温泉に浸かったら今朝どっと疲れが出たとのことで、諸々の予定には同行せず。柿澤さん・泉くんは私たちの後にレストランを訪れたとのこと。野菜たっぷりで本当に美味しいランチをいただきました。「こういうのが食べたかったんだよぉー!」と綾香くん。

ホテルに帰り、今度は朋さん、遠藤さん、玉寄さん、奥本くん、吉岡で、湯浅さんの実家の骨董屋に車で向かう。

玉寄さんは高知で骨董屋に寄れなかったことがとても残念だったようでしきりにそのことを言っていた。湯浅さんの実家に良いものがあれば、それを買いたいというようなことを言っていた。

松山市を出て車で40分程度。隣の東温市に湯浅さんの実家はある。前日、“狭いので、何人来るか教えてください”と言われていたのだけれど、狭さのイメージが湧かない。

住宅街の路地の向こうで手を振っている湯浅さんの姿が見え、なんだか怪しいお宅の前で車を止める。よくわからない物が家の周りにも沢山置いてある印象。よく見たら家の前の電話ボックスの中に鳥の剥製がぶら下っていた。オレンジの花のアーチをくぐってお店に入ると、湯浅さんのお母様がコーヒーやお茶を出して迎えて下さった。今はやっていないらしいお店の中は、各国の品物、楽器、仮面、アクセサリー、布などで溢れている。壺の上に板と座布団が乗せてあったので腰を掛けたら壺が割れてしまった。薄い壺だったよう。本当に申し訳ないことをしてしまった。ご近所の病院の方や絵描きさん、親戚の方々が気さくに出入りしている。お母様は若い頃から世界を旅して回っているとか。当時2歳の湯浅さんを連れて驚くほどチャチな磁石を頼りにアフリカの砂漠横断を決行したとか。4つの大学に在籍したとか、友禅染をやっていたとか、この店の建物は自分たちで手作りで建てたとか…。本当に、やりたいことを徹底的にされてきた人生みたいです。

骨董屋には電車の枕木が使われているらしい。今では手に入らなくなってしまったとおっしゃっていた。我々が出るときには犬も見送りに来てくれた。

3時前にホテルに帰り、休んで4時に劇場に入る。

自分たちのホテルに帰るのもおっくうなので(というか、自分はホテルのカギを劇場に忘れてしまったので)東横インのロビーで待機。玉寄さんと少し話をする。冷房がきついからと玉寄さんは先に劇場へ向かった。僕は少しロビーで休憩。劇場には今日も差し入れがある。朋さんが、スイカを差し入れてくれる。
実は、スイカはあまり好きではない。“僕はスイカは結構なので、皆さん僕の分も食べてください”と言うと、玉寄さんから“メロンは大丈夫なのか?”と質問があった。“メロンは大丈夫です”、“なんだ、お前それは”と玉寄さんが笑うと松本くんが、“奥本君は芦屋育ちだから”と言ってみんなが笑った。スイカは水分が多いのと、種をいちいち出すのが面倒なのと、手がベチャベチャになるのと、甘みがべとっとしているので、好みではない(別にスイカをけなしているわけではありません)。こうして、スイカがあまり好きでない理由をあげると、松本くんや玉寄さんの指摘は的を射ているような気がする。スイカが好きでない理由がなんだか、ぼっちゃんっぽい。けれども、食べれないわけでないため、半ば言い訳的に“これが、僕の分として取り分けてくれたら食べないこともないのですが、大皿に乗っているのをあえてとるのはね。気が引けるし、もっとスイカが好きな人に食べて欲しいという思いもあるので”というと、湯浅さんがスイカを皿に入れて取り分けてくれる。僕は固まる。泉さんと松本くんと湯浅さんがニヤニヤとこちらを見ている。そこで、おもむろにジャコテンを引っ張り出し、僕は食べ始めた。
“おっくんは他に苦手な食べ物はあるの?”と泉さん。
“そうですね。ハンペン、さつま揚げ、ちくわ……練り製品(かまぼこ以外)があまり好きじゃありませんね”
“でも、今ハンペン食べてるじゃん”

“これは大丈夫です。美味しいです。僕はあのふわふわした甘い奴がダメなんですよ”
“あっ、そうか。静岡だから、ハンペンっていうと黒ハンペンのイメージだったからなあ”

と、泉さん。僕は何か取り繕うように。

“ジャコテン、美味しいですよ。うん、これは美味しい。愛媛は食べものが美味しいですねぇ”

と、連呼した。別に僕はお世辞で言っているのではなく、本気でそう思った。特にジャコテンは美味しゅうございました。湯浅さんの実家で取れたという、プラムも頂戴しました。僕のために取り分けられたスイカは春菜さんに食べてもらいました。そこまで、スイカが嫌いかという人もいるかもしれませんが、好んで食べるものではないということです。

昨日と打って変わって、今日は劇場の音の響き具合にも慣れ、仕込みの段階で天井から雪のように降っていた防音材も落ち着き、開場時間の前倒し、それに伴う楽屋の移動にも慣れ、昨夜の焦燥感や違和感が嘘のようです。皆余裕をもってウォーミングアップや準備をし、千秋楽に臨みます。お客さんもお陰様で今日は満席、楽屋も終始明るく、このメンバーで力を合わせてよい舞台を生むんだという感覚が強くなる。

ウォーミングアップをしている時に、前日気づかなかった残響に気づく。どうやら後ろの金パネルから若干音が返っているようだ。相当気を使っているにもかかわらず、初日に会場の音響状態を完全に把握できないのはなぜだろう。自分の耳が未熟だからだろうか。だがしかし、この返りも楽器を助けてくれるような音ではないので、基本的な意識は昨日と変わらず。

舞台の出来は遠藤さん曰く大変良かったとのことですが、一つ残念なのは「霧降」の歌で皆の感情が高ぶりすぎて上ずり、ハーモニーがだいぶ乱れたこと。けれど松本くん曰く「皆引かずに立派に歌っていたからまだしもよかった」とのこと。ハーモニーは今後も課題です。

僕(松本)の力不足でもあるので、策を練って今後改善して参りたいと思います。

カーテンコールではスタッフさんも含め、このツアーメンバー全員の名前を紹介しました。紹介した奥本くんが「自分の名前は誰が言ってくれるんだ?」と不安になり、「そして、奥本聡でございます」と芸人風な挨拶をしてしまい、後で「誰かが言うのに、信用ないな〜」と言われていた。「いや、とっさに言ってくれる人はいなかったはず!」と奥本くんは思っているよう。

「こんな世界があったのか!」「昨日よかったからまた来ました」等、お客様からありがたいお言葉をいただきました。そして、初演時から売れずに路頭に迷っていたメンバーのサイン入りポスターが、この日ついに売れました!

千秋楽で初めて面と向かって猿が良かったと言われました。陰で良かったと言っている人がいたことはなんとなく聞いていたのですが、対面で言われたのは初めてで少し照れました。次の芝居で、猿が落ちないか不安です。また、終演後僕はいつも物販をしているのですが、千秋楽では“あれ? 誰かと思ったら出演されていた方ですよね”と声をかけられた。ボートシアターのメンバーが一人何役もやるというのは、舞台の上に限らないのです。

千秋楽を終えた感慨に浸るのも束の間、退館時間を見据え急いでバラシを始める。元幼稚園の可愛い階段を道具を担いでクルクル降りて行く。頑張ったが退館時間を過ぎてしまう。劇場の鈴木さんたちスタッフの方々は、集客がおぼつかなかったとのことで、なんとチケットを買って観て下さったとか。四国との関係が薄い私たちの公演チケットをさばくのにご苦労をおかけした上、小劇場の運営はさぞかし大変と思われる中、お心遣いをいただき、感謝の思いで一杯です。

公演一ヶ月前のワークショップでも大変お世話になりました。鈴木様をはじめとしたシアターねこの皆様に心より御礼申し上げます。

ホテルの裏手の居酒屋で打ち上げ。鈴木さんをはじめとしたシアターねこのスタッフさんたちも来て下さる。お刺身を皮切りに食べ切れないほどのお料理が出てくる。乾杯の時、グラスを持って席を立ち、各人を労いに行く遠藤さんの姿を初めて見た。この大変なスケジュールのツアーを好評のうちに終え、皆で協力して乗り切ったことが嬉しく、劇団代表として感謝したいと思ったのだろう。遠藤さんはこの日、お元気だがやはり疲れが出たのだろう、足がむくんでしまった。奥本くんも出し切った感からか早々に睡魔が襲って来た様子、明日も横浜まで綾香くん共々運転をしなければならないので、皆に惜しまれながらも早めに退席してホテルに帰った。

休む時に休むということをこのツアー中は徹底してきた。やはり、そこは最後まで貫きたい。まだ、公演が終わっただけでツアーは終わっていないので、体力に余裕のあるうちに帰ることにする。それより遠藤さんの足が心配だ。美味しいご飯を食べられず残念だったが、ホテルに帰り、すぐに寝てしまった。

明日は8時半ロビー集合だが、2時くらいまで楽しく飲んだ。店を出て、途中から参加してくれていた陽一さんとホテルの前で別れ、皆で部屋に上がって行ったが、酔っ払い女子たちは楽しさが止まらず、部屋前の廊下でもだいぶキャーキャー騒いでしまって、先に帰っていた遠藤さんを起こしてしまった。ホテルの皆様ごめんなさい。