ベチャ(輪タク)に乗って神様がやってくる
国際交流基金と横浜ボートシアターの主催によりインドネシア国立芸術大学の講師10名を招聘し、一から作品づくりを行なった本作。「今回のようにお互いの中に踏み込んで芝居を作るのは初めてです(朝日新聞・1996年8月3日)」と原案・出演のベン・スハルト氏が語る通り、日本・インドネシア両国の様々な差異に向き合って作り上げられた『耳の王子』インドネシア公演記録映像を、期間限定で公開いたします。配信開始は6月7日(日)です。お見逃しなく!
◆日本語・インドネシア語字幕をつけて視聴可能!
今回の配信につきましては、インドネシア語に対しては日本語字幕、日本語に対してはインドネシア語字幕を施しました。動画の設定から字幕言語を選択し、字幕を表示していただければお好みの言語で動画をご視聴いただけます(当劇団では全ての機器での動作を保証いたしかねます。あらかじめご了承ください)。
YouTubeの字幕表示については、こちらを参考にしていただければ幸いです。
https://www.yokohama-boattheatre.org/…
1996年、ジョグジャカルタのノトプラジャンのプンドポで上演された『耳の王子』。原案・脚本・演出の遠藤啄郎はその時の体験が強く印象に残っており、後に新聞の連載で当時の出来事を詳しく書き綴っています(遠藤が米寿の時に作られた記念冊子のタイトル『「場」の持つ力』はこの連載記事からつけられたものです)。
◆ノトプラジャンのプンドポについて
100年ほど前、王宮用の建物として造られ、結婚式や舞踊や音楽の演奏会場として使用されていたが、今は公民館として芸大の学生達の稽古や町の人達のガムランの稽古や演奏会に使用されているようだ。
奥行き三十メートル、幅二十メートルの大きさで、屋根を支える大小の木の柱と石の床だけの建物で、ロビーも無ければ舞台用照明設備や音響設備、楽屋もなかった。(中略)
場(トポス)の持つ力によって、これほどまでに作品世界が生まれ変わり、見えないのではとあきらめていた世界が見えてきたのだ。(遠藤啄郎「場」の持つ力 初出:十勝毎日新聞 2001年)
◆あらすじ
時は現代、老いた太陽神スルヨはベチャ(輪タク)でインドネシアと日本の合作劇「マハーバーラタカルノの物語」の観劇に向かう途中、交通事故に遭ってしまう。ベチャの運転手が流した血を見、若かりし日の出来事を回想するスルヨ−−王女クンティの耳から誕生した自身の申し子カルノは、生まれるや否や、王と聖者との誓約により母から引き離され河へ流された−−我にかえり再び劇場へと歩いていると、残留日本兵の亡霊と出会い、彼の身の上話を聞く。はじめは自らが忘れ去られていることに激怒する日本兵だったが、話が済むとすっかり気を良くし、楽屋への差し入れに、自分の墓の目印となっている木から取れるマンゴーの実を持っていくと言うのだが……
カルノは、神の意志の基に、実の親兄弟の敵方に立ちつつ、自らの死によって親兄弟に味方しようとする一人の武将である。カルノの深い悲劇と重ねることで、インドネシアの独立戦争に参加した残留日本兵たちに、実は様々な逡巡を含む一人一人の葛藤と悲劇があったことが、はっきり見えてくるようだ。
(田村史氏・当日パンフレット寄稿より)
◆スタッフ・キャスト
原案:遠藤啄郎+ベン・スハルト
監修:田村史
脚本・演出・仮面:遠藤啄郎
振付:ベン・スハルト+森田守恒
音楽:サプトノ+入野智江
舞台装置:島次郎
Penata Panggung(舞台スタイリスト):アグス・プラスティオ
衣装・仮面:緒方規矩子
照明:松本直み
Penata Cahaya(照明スタイリスト):Kusyuliadi
音響:市来邦比古
Penata Suara(音響スタイリスト):野村羊子
舞台監督:中杉雄一
演出助手:野村羊子+三村正次
衣裳・仮面製作:関野公子+牧香織+富田美行+大石悟+中村文映
宣伝美術:杉浦康平+佐藤篤司
制作:山下晃彦
インドネシア公演記録映像撮影: Suji Otuki
インドネシア公演記録映像編集: 古屋均
Pimpinan Produksi(制作):スハルヨソ
Sekretaris/Publikasi:(秘書/出版)ダルニ(インドネシア)
Bendahara(会計):ユディ・アリヤニ(インドネシア)
Transportasi(輸送):バンバン・プジャスウォロ
Akomodasi(宿泊施設):ユドヨノ
Perlengkapan(装置):ファジャル・スハルノ
出演
ベン・スハルト、スハルヨソ、ユディ・アリヤニ、ファジャル・スハルノ、バンバン・プジャスウォロ、ダルニ、スティヤストゥティ、アグス・プラスティオ、ユドヨノ、サプトノ(楽師)、M.Miroto、Daramawan、野口英、木村秀行、玉寄長政、山下晃彦、東の宮美智子、小野村幸子、野村朋子、増田美穂、入野智江(楽師)、田村史(楽師)、Catur
Wibono、Bukhori、Edi Suisno、Oct. Yudha、Efjuardi、Tafsir Huda、Rosita、Ahmad
Jusman、Steyo Irmanto、Akhrida Jeni
主催:国際交流基金+横浜ボートシアター
◆YBT舞台動画アーカイブ
横浜ボートシアターのYouTubeチャンネルでは、劇団の過去舞台作品を随時期間限定配信して参ります。配信作品の更新ペースは隔週程度を予定。当劇団の様々なレパートリーをお楽しみください。
◆『「場」の持つ力』
劇団創設35年と遠藤啄郎の米寿が重なった2016年に刊行された記念冊子。
横浜ボートシアターと遠藤啄郎のこれまでの軌跡をまとめた決定版です。
公演写真、劇評、詩、公演チラシ、遠藤啄郎による絵画、有識者からの寄稿、コラム”『「場」の持つ力』”ほか、劇団外部の人が今まで見ることが出来なかった貴重な資料を一挙に掲載!