『極楽金魚』の歴史

3月24日(土)〜25日(日)に横浜「自在」南軽井沢稲葉邸で開催される創作影絵人形劇二本立て公演
そのうちの一作「極楽金魚」は、50年以上の歳月の中で実に様々なスタイルで上演されてきました。
1週間後の上演を前に、改めて作品の辿った歴史を振り返ります。


四国高松の郷土人形「奉公さん」についていた小さな紙切れにごく簡単な由来話が書いてあったのを見て、それを元に遠藤が創作した物語。
まず、ラジオドラマとして書いた。出演は後に人間国宝となる竹本住太夫、山本安英、市原悦子他と豪華な顔ぶれ。

1965年頃 ラジオドラマ「奉公さん」
文化放送

それを劇にしようということになり、衣装デザイナーの緒方さんが人形をいち早く作った。その人形を見て「人と人形の劇」にすることになったという。
その後の上演記録は華々しい。
まず、戦後の小劇場の走りである代々木小劇場・劇団「変身」が上演。

1967年『人と人形による劇・極楽金魚』
演出=遠藤啄郎
人形美術=緒方規矩子
主催=代々木小劇場・劇団「変身」

次の年に結城人形座が孫三郎襲名披露として糸操り人形劇を国立劇場で上演。

1968年 人形劇『極楽金魚』
演出=栗山昌良
人形美術=緒方規矩子
主催=結城人形座

そして劇団青年座がフランス・ナンシー国際演劇祭に参加。

1971年『人と人形による劇・極楽金魚』
フランス・ナンシー国際演劇祭参加
演出=遠藤啄郎
人形美術=緒方規矩子
主催=劇団「青年座」

同じ年には児童文学書として出版される。子供の頃に読んだという話もちらほら。
出版にあたり、だいぶ書き足したとのこと。

1971年『極楽金魚』出版
装丁・挿絵=岩崎巴人
発行=フレーベル館こども文庫

そしてついに国内やヨーロッパ巡演のために自分たちの劇団「太陽の手」を立ち上げる。

1975年〜『人と人形による劇・極楽金魚』
日本各地巡演。フランス、スイス、イタリア、巡演後、パリ・オルセイ劇場にて一ヶ月間上演。
演出=遠藤啄郎
人形美術=緒方規矩子
主催=劇団「太陽の手」

最初に手掛けた「極楽金魚」がこのように当たってしまったので、演劇の道に進むことになってしまったんだなぁと遠藤は言っている。

その後も日本舞踊公演、説経節の大夫による語り公演などがあり、現在取り組んでいる創作影絵人形芝居へと続く。

1979 日本舞踊『極楽金魚』
振付=尾上菊之丞
音楽=藤舎推峯
演出=遠藤啄郎
主催=尾上菊紫郎の会

2010年 語り『極楽金魚』
演出=遠藤啄郎
曲付=説経節政大夫
主催=美音の会

2012年『創作影絵人形芝居・極楽金魚』
演出=遠藤啄郎
人形デザイン・制作=竹内英梨奈
音楽=松本利洋
主催=横浜ボートシアター

遠藤にとって因縁が深く、劇団関係者にもよく知られているこの作品ですが、主催が横浜ボートシアターなのはなんとこの『創作影絵人形芝居・極楽金魚』だけでした。
『創作影絵人形芝居・極楽金魚』は2012年に初演した後、東京、横浜、前橋、大阪、岡山など各地で上演、20公演以上行い、現在も進化を続けている。
50年の間、多くの人の創作意欲をかき立て、様々な形態で語り継がれて来たこの物語、最新版の影絵でどのように生まれ変わっているかどうぞお楽しみに!

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