語りワークショップ日誌(2014年12月1日)

正座椅子

本日の稽古には、新品の正座椅子が登場し、活用されました。
12月の語り公演「日本間で聴く 樋口一葉・芥川龍之介」で使用するため、吉岡が製作したものです。
いつもは全員椅子に座って語るのですが、今日は正座椅子で語ったところ、皆さん声の出がよいとおっしゃっていました。声を出す時の腹の支えがしやすいとのことです。
何故そうなのか科学的なことはわかりませんが、そんなに良いとなれば、今後の語り稽古は正座椅子を使うことになりそうです。
正座椅子は巷にも売られていますが、何故自前で製作したかと言いますと、単に物作りが好きだからという理由だけではありません。シンプルで気に入るデザインの物が無く、物によっては値段が高く、そして、体に合った高さの物が欲しかったのです。
モデルにしたのは、かつて私が義太夫節を竹本越道師に習っていた時、師匠のうちで稽古の際使われていた木製の重厚感のある正座椅子です。それは越道師匠の師匠でもある豊竹若太夫師が使っていた物と聞いた覚えがあります。豊竹若太夫師は、若い頃生で聴いていたという遠藤さんが大ファンで、私も録音や映像を通して、舞台表現の考え方が変わるほど影響を受けた方です。その憧れも込めて製作しました。
材料はあるものも利用しましたが、括り付ける小さな座布団の材料費を合わせても2000円かかりませんでした。
黒の地塗り材を塗った上にニスを重ね塗りしたら、まるで漆を塗ったように立派になりました!
ちなみに年末は、説経節政大夫師にお借りしている折り畳み式の見台をモデルに、自前の見台を製作する予定です。

製作途中の正座椅子

ニス塗り段階の正座椅子

本日の参加者も「にごりえ」を語っている方ばかりでしたので、遊女に関わる話題を一つ。
遠藤さんがかつて知り合いだった芸者さんが次のようなことをおっしゃっていたそうです。
「男にとっては、自分がお金を注ぎ込んだ女ほど価値が高くなる。だからお客にはお金を使わせないといけないの」とのことです。
本によれば、遊郭では四季折々頻繁にイベントが組まれており、遊女はその都度自分に付いている旦那から貢いでもらい、決められた額を店に納める義務が課されていたとか。
旦那の付いていない遊女は大変で、もし店への支払いができない時は、店への借金として残るとのこと。そのような遊女の苦しい立場をはじめ、人とも思われない扱いについては、調べるといろいろわかり、実に興味深く、辛いものがあります。
しかし遠藤さんの知り合いの芸者さんがおっしゃっていたことは、なんだか一つの法則として、私たちの極普通の日常にもありそうですね。男女共に、相手に貢いでいる人は、自ずから相手への執着を増している可能性もありそうなので、ご注意を、なんて思います。

吉岡紗矢

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