劇団新企画「シリーズつなぐ〈艀〉」10月6日開催!

横浜ボートシアターと「自在」南軽井沢稲葉邸の4年間

3月24日(土)〜25日(日)に開催される創作影絵人形芝居二本立て公演

その会場となる横浜「自在」南軽井沢稲葉邸は、繁華街からほど近いとは思えないくらい閑静な昭和風の日本家屋です。横浜駅からは少々歩くものの、環境を考えると立地条件はとても良いといえるでしょう。
稲葉邸の会場部分は昔ながらの日本間なので、季節・天候によって会場の環境が大きく変わります。二日間の公演でも障子を使ったり使わなかったり、座席の配置を変えたりなどと、日毎に空間づくりの工夫をする楽しさがありました。
また、幸運にも稲葉邸は劇団のレパートリーとの相性が非常に良い会場でもありました。近年劇団で多く上演される樋口一葉作品の「語り」において、稲葉邸は上演会場として真っ先に思い浮かぶ存在でした。また、四季折々に様々な表情を見せる大きな庭が日本間からすぐに眺められるので、自然から題材を多くとった宮澤賢治作品との相性も最高でした。
稲葉邸のような会場が身近にあったことに、改めて感謝の念を感じております。そして、稲葉邸の管理・公開に尽力してくださった今井嘉江さんにも大変お世話になりました。ありがとうございます。

前置きが長くなりましたが、会場での最後の公演を迎えるこのたび、ささやかながら稲葉邸で開催された劇団公演を簡単に振り返ってみたいと思います

◆2014年5月31日・6月1日◆

創作影絵人形芝居「極楽金魚」、語り「ざしき童子のはなし」

仕込みの最中に撮ったパノラマ写真。だいぶ豪華な空間に見えます。

最初の公演は遠藤啄郎作の創作影絵人形芝居「極楽金魚」と宮澤賢治作「座敷ぼっこの話」の二本立て。当時の写真を掘り出してみると、初めての公演ということもあり、鴨居に仮面を飾るなど華々しく開催した。リハーサルだったか本番だったか定かではないが、会場の中の様子が外から見えていたようで、道ゆく人が興味津々に見ていた、との話をあとで聞いた。この公演の情報はヨコハマ経済新聞でも取り上げていただいた。
https://www.hamakei.com/headline/8821/

◆2014年12月20日・21日◆日本間で聴く樋口一葉・芥川龍之介「にごりえ」「藪の中」

樋口一葉作「にごりえ」は稲葉邸で初演されました。

語りのみで合計三時間くらいの公演となってしまい、お客様にはとてもハードだったのでは……と今更ながらに感じられるラインナップ。季節が冬だったので、ガスストーブなどでお客様には寒さをしのいでいただいた。「にごりえ」は稲葉邸を皮切りに色んな場所(白山はなみち、文京区ギャラリー吉永、森鴎外記念館、シアターX、帯広、札幌、士別)で上演。のちに劇団でいくつも作品化した樋口一葉の語りシリーズの第一作でもあった。そんな画期的な作品の初演が稲葉邸だった。

 

◆2015年11月7日・8日◆

広い庭にはお稲荷さんも。

宮澤賢治を語る「どんぐりと山猫」「洞熊学校を卒業した三人」
初夏、冬ときて、秋の上演。「どんぐりと山猫」は特に秋らしい作品で、植物が豊かに繁る稲葉邸にはぴったりだった。会場の日本間は草木生い茂る稲葉邸の庭を臨み、物語世界へと誘ってくれるかのようであった。

 

◆2016年4月9日・10日◆

日本間で聴く一葉「わかれ道」「うつせみ」「軒もる月」

会場で振る舞われたお茶うけ。その名も一葉煎餅。

夏・冬・秋ときて春。春夏秋冬全ての季節で稲葉邸での公演を達成(狙ってズラしていったわけではありません)!この頃には樋口一葉といえば真っ先に稲葉邸で上演することを想像するくらいには、稲葉邸のイメージが劇団内では定着していた。

 

◆2016年10月29日・30日◆

創作影絵人形芝居「極楽金魚」、語り「どんぐりと山猫」

季節によっては、稲葉邸の庭には色とりどりの花が咲きます。

両作品とも稲葉邸では二回め。それぞれパワーアップした姿を稲葉邸で見せた。稲葉邸・東中野ポレポレ坐と首都圏二箇所で上演したのち、大阪細野ビルヂング、岡山天神山文化プラザと関西地方に遠征。横浜から各地へ、というイメージは劇団にとっても非常に自然なもので、その拠点として稲葉邸をありがたく使用させていただいた。

 

◆2017年7月8日・9日◆

日本間で聴く一葉「大つごもり」「十三夜」

「大つごもり」の主人公・お峰の奉公先の富豪が所有していそうな大きな蔵。これももちろん稲葉邸にあります。

この頃になるとだいぶ会場にも慣れ、今までにない発想で会場の空間を作るようになる。縁側へ続く障子を全て取り払い、夏ならではの開放的な空間の元でのびのびと公演ができた。これでようやく稲葉邸における劇団なりの素晴らしい空間作りが完成したかのようであった。この公演の頃だっただろうか、稲葉邸近くのお蕎麦屋さんが店をたたみ、お店のテーブルや椅子がたくさん稲葉邸にあった。椅子はお客様の席、テーブルは舞台装置として利用させていただいた。ますます素晴らしい場所になっていくように感じられた。

 

◆2018年2月24日・25日◆

日本間で聴く宮澤賢治「いてふの実」「水仙月の四日」「土神と狐」

何も置いていないシンプルな日本間(撮影:深田隆之)。

当初は前回と同じく障子を開け放して開放的な空間にするつもりだったが、開け放すと眩しすぎるくらい陽気が良く、最終的な形を決めるのに時間がかかった。初日・二日目とそれぞれ別の方法で乗り切った。

 

さて、2018年3月24日・25日、最後の公演で稲葉邸はどんな顔を見せてくれるのでしょうか。

ぜひ会場にてお確かめいただければと思います。

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