「日本間で聴く一葉」稽古日誌(2017年6月9日)

今回初出演します岡屋さんは、池袋コミュニティー・カレッジの遠藤さんの語り講座の生徒さんです。そして当劇団の語りワークショップにも参加されています。

70代の主婦で、芝居経験はありません。

感情を露出する「芝居」なんてものは、とても恥ずかしくてできませんというタチの方です。

7〜8年間遠藤さんの指導を受け、言葉を一字一句おろそかにせず、タカを括らず、機能させることを学んでいらっしゃいました。そしてそれに必要な声の幅を求めて、響きと腹の支えを研究されて来ました。

それがいつの頃からか、言葉に情感が乗るようになり、こんなに芝居心があったのかと思うほどのびのびと表現されるようになりました。それでも気分に流されることなく、遠藤さんの教えに忠実に、言葉を音として組み立て、言葉同士の関係性を立ち上げる意思を失わず表現されています。
岡屋さんのこのような段階の踏み方は、古典芸能的ではないでしょうか。
現代演劇の世界ではまず感情と気分を乗せることが芝居と思われている面があると思います。
言葉に対して謙虚で、洞察力がある岡屋さんの上達を思うに、役者の基礎はどうあるべきか考えさせれます。
役者でなくとも、役者志望でなくとも、真摯に言葉と向き合い熱意をもって探求される方と共に学び合いたいと私たちは考えています。
経験、年齢は問いません、ご興味のある方は是非語りワークショップにいらして下さい!
と、これは宣伝ですね。
本日は、音楽を付けて語る3回目の稽古。
ひとしきり稽古した後はいつも「一葉は凄い、よくこんなものが書けるものだ」という話になってしまいます。
それに加えて今日は岡屋さんが「登場するのは極普通の人ばかりですね」と言えば、遠藤さん曰く「一葉の作品には悪意に満ちた人間は登場しない。(一葉の視点には、スレていない)若さを感じる。それも魅力だ」
一葉の作品に出て来る人々は誰を取っても心を寄せられる人物として描かれています。
誰が悪いとも言えない中で様々な思いが絡み合い起こる事件はとてもリアルです。
そして多くの作品に共通して描かれているのが、貧しさゆえの辛さだと思います。
松本くんの音楽は今日は出だしが「おっ」と思うほど冴えていました。
最近読書量が格段に増え、それで感覚がひどく冴えているようです。
会う人ごとに読書の勧めをするのが最近の松本くんです。
作品はまだまだこれから、語りそのものを、そして音楽との関係をよりダイナミックに、より細やかに仕上げて行かなければなりません。
音楽との関係はこれまでの一葉の語り作品より更に進化しています。
皆さまどうぞご期待下さい。
記:吉岡紗矢