劇団新企画「シリーズつなぐ〈艀〉」10月6日開催!

シリーズ「つなぐ〈艀〉」第1回開催報告

10月6日、シリーズ「つなぐ〈艀〉」第1回「艀で暮らし働く人々 〜子供たちが残した港の記憶〜」を開催いたしました。

普段の舞台作品の上演とは違い、まち歩きと講演を合わせた、横浜ボートシアターにとって新たな試みとなるイベントです。

最近では身近な風景ではなくなってしまった「艀(はしけ)」ですが、コンテナ輸送が発達する以前の横浜には、なくてはならない輸送手段でした。そのため、かつては横浜の河川にもたくさん係留されており、艀の連なる河岸が原風景となっている世代の方も多くいらっしゃいます。

船劇場での講演は、艀という切り口で横浜港発展の歴史を概観するお話から始まりました。河北直治先生による解説、そして詳細な資料の中で一際目を引くのは、1960年代に「船混み問題」と呼ばれるほど艀が増えた時期の空中写真かもしれません。山下埠頭にびっしりとひしめき合っている艀の様子は圧巻でした。

河北先生による的確な導入に続き、このような時代の中で艀で暮らした人々の生活や労働の様子を解説していく松本和樹先生の話へと移ります。今回鍵となるのは、1950〜60年代の綴り方運動で残された子どもの作文の紹介です。

船の上に暮らす子どもたちは、親の仕事の都合で、家が東京に行ったり、横浜に戻ったりすることを余儀なくされます。そのため、彼らは学校のある日は寮に泊まり、土日には自分たちの家に戻るという生活をしていたようです。しかし、またある時は、仕事に出る船に同乗し、多くの荷物を積んだ「本船」での仕事の様子が作文に描写されてもいます。

これらの作文を、横浜ボートシアターに関係の深い役者の面々が朗読し、松本先生が内容を補足していきます。おかげさまで、参加者の方々からは「あの時代のある生き方、息づかいを感じることができた」「艀で暮らすということのリアルな側面を知ることができて、とても心に響く経験となりました」とった声が寄せられ、皆様それぞれに艀での暮らしを実感していただけたようです。

松本先生の講演終了後は終了時刻ギリギリまで活発な質疑応答を行い、松本先生、河北先生ともに丁寧に率直な疑問に対する回答をしてくださいました。

今回、艀を改造した船劇場でこのようなイベントを開催できたことは劇団にとって大変意義深いものでした。今後とも、皆様と一緒に学んでゆく機会を作れたらと願っております。

末筆とはなりますが、河北直治先生、松本和樹先生、参加者の皆様、そして開催に協力してくださった皆様に感謝申し上げます。

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