『恋に狂ひて』2015年ツアー記録 6月26日(金)岡山〜高知 移動日

6月26日(金)岡山〜高知 移動日
執筆者の文字色:吉岡 奥本 松本


撤収〜出発

朝から撤収作業。

この頃は各々担当する仕事がはっきりしてきて、速やかに作業を行う。

昨夜は私(吉岡)を含め何人か、かなり遅くまで衣裳の洗濯、乾燥機かけをしていた。おかげで寝不足ぎみ。

昨日、遅くまで飲んでいたが、岡山のスタッフさんが朝から手伝ってくださる。しかも、ボランティア。とてもありがたい。岡山では受け入れ側が全部やってくれた。本当にありがたいことだ。劇場のスタッフ・池田さんによるロープの巻き方講座。ロープを扱うのはボーイスカウト時代から好きなので、詳しく知りたかったが、最後の方だけしか見れず残念。池田さんはこれで人を救ったこともあるとか、ないとか。なんだか、悔しい。次は僕もロープの技を発揮しようと思う(と、いっても綺麗に結ぶことくらいしか出来ない)。

高知に向けて出発。

劇場を後にする私たちの車を、お手伝いして下さったスタッフの方々が手を振って送り出して下さる。惜しみないご協力、本当にありがとうございました。

人生初の四国。瀬戸大橋を渡る。香川の山はなんだか不思議な形をしている。初めはバンの助手席に乗っていた僕だけれども、途中でトラックに乗り替わる。助手席の人はテンションを上げなくてはならないらしい。悲しいけれど、僕には難しい仕事だった。

池田パーキングエリアで休憩。ぼけーっと休んでいたら、制作の斎藤さんが「池田高校が〜」と甲子園の話をしているのが遠くで聞こえた。山がちで、「ここに一時間くらいいたら、すごく回復するでしょうね」と政大夫さんと話す。

日陰のベンチに寝転ぶと爽やかで気持ちいい。すごい日差しだったが、日向で寝転ぶのも気持ちいいと綾香くん。でもしばらくしたらやっぱり日陰に来ました。

トラックは綾香さんが運転し、竹内さんが音楽をかけていた。竹内さんは面白い看板を色々と見つける。高知に入ると、狸の看板がトンネルの横にあったり、クジラが車を運転していたりと独創的な看板が多い。しかし、一番印象的だったのは、パーマ屋の看板だ。“大阪の技術”と書かれた看板。しかも、ぼろい。

“パーマって大阪なのか?”

車内でそんな話題が出る。パンチパーマなら大阪に似合いそうだと僕は思った。それにしても、僕は面白い話の一つも出来ないなと自己嫌悪。そんなんだから……とさらに自己嫌悪。

会場到着

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車はあっという間に高知県香南市に入り、弁天座で荷下ろし。

えっこんな所に劇場が…と思うような路地を進んで来た印象。木のいい匂いのする劇場。一気にテンションが上がる、と言うか浮き足立つような感覚。

板作りの会場でとてもデリケートなため、搬入にちょっと緊張する。

弁天座までの道は狭く、トラックは中々入りづらい。けれども、そこは慣れたもの。綾香さんはするするとトラックを入れていく。搬入口近くまで来て、泉さんが“オ・ライ、オ・ライ”と良い声で誘導。自信のあるその声に“とても、僕には出来ないなぁと”ずれたの感心をする。搬入に際して、我々の金パネルの後ろに置かれた書割が目に入る。いかにも歌舞伎らしい書割だ。メンコのように薄い書割を見た。書割の表と裏は表裏一体で、でも全くそれは異なっている……何だろう、上手くまとまらないが何か不思議なものを感じてしまった。

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試しにちょっと音を出してみたら、会場の音の返りが少ない……というか全くないような気がして、明日の公演でどのように演奏するか思案に暮れる。

「声を出してみろ」と言われとっさに出してみたが、「恥ずかしそうだね」と誰かに言われる。自分でも呆れるが、表現の狙い無しに大きな声を出すのが恥ずかしい。この辺、個人的な問題点でもあります。劇場は声が全部吸い込まれてしまうような感じ。そしてピカピカの木の床はよく滑る。

音の返りが気になり、声だしをすることにした。ちょっとの時間に遠藤さん、説経節政大夫さんに声を聴いてもらい返りとの関係性をチェック。二階に向けて声を出すと全然返りが違う。明日はその方法でいくことにする。

二階に、いかにも「大物」が使う体の楽屋があり、女性役者陣が大興奮していた。

この楽屋は海老蔵さんも使った部屋なのではないか?

遠藤さんのお知り合いが弁天座にいらっしゃり、芋けんぴ、ミニトマト等大量の差し入れをいただく。

一通り弁天座での事前チェックが終わり、会場の真向かいにある絵金蔵で絵金の絵や歴史に触れる。

憧れの絵金。資料館もいいがやはりお祭りで観てみたいと思う。小作品で笑い絵というのがあったけど、エログロで残酷なところもあり、正直あまり笑えなかった。あれで笑える人は逞しい。急いで飲んだ飴湯が美味しかった。

絵金蔵で高知の飲み物を飲んでいると春菜さんが、慌ててやってくる。チラシを持っていないか? とのこと。手元になかったので、劇場から取ってくると、近所の骨董屋さんがチラシを置いてくれるのだと言う話。どんなものがあるかと興味を持ち、僕も春菜さんについていく。そこは、昭和の看板がかかった骨董屋さんで、元気で愛想のいいおばさんが経営していた。“せっかく東京(横浜)から来たのに全然地元の人たちが知らないのはもったいない! 看板を作ってご覧。おいてあげるから”と言われ、急きょ看板をつくることになった。が、ここにいるのは、春菜さんと僕。あまり、細かいことが得意ではなく、どちらかと言えばのんびりしているタイプ。格好悪い看板を作ってもお客さんが来ないしどうしようかなと思っているところに紗矢さんが登場。僕は待ち合わせ時間に遅れる旨を朋さんに連絡することにして、紗矢さんと春菜さんで看板を作る。完成した看板は、近所の家の前に置かれた。それにしても、高知は日差しが強い。夏になったようだった。

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骨董屋さんに竹内さんもやって来た。お店の女性が振り向き様「あら!」いい男!と言わんばかりに、即刻手を握っていて可笑しかった。竹内さん、もてますね〜

通りすがりの小学生が「何も持っちゅう?」と話し掛けてくる。方言て素敵です。聞けて嬉しかった。骨董屋さんが「ご近所を訪問して宣伝して歩いた方がいいわよ」と助言してくれたけれど、予定が詰まっており断念。訪問して回ったらさぞ楽しかっただろうと思う。

琴ヶ浜

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再び車に乗り込み、斎藤朋さんの案内で、かつてケイ・タケイさんが踊ったいう琴ヶ浜に行く。都会周辺ではなかなか目にかかれない、広大で本当に何もない浜辺だった。浜辺の入り口付近にある駐車場には、龍馬の嫁とその妹の銅像が立っていた。銅像の横にあった立て看板に高知出身の偉人が列挙されていた。その中で一際異彩を放つ写真が一枚。三菱創業者の岩崎弥太郎であった。この写真が「すごい顔」ということで政大夫さん、遠藤さん、玉寄さんが面白がる。湯浅さんは浜辺にあったとても大きな流木が気になって、「あれトラックに積めるかな〜?」などと言いながら砂浜を走って行った。本当に元気だなあ。

ここは砂ではなく砂利の浜辺。ダンスを踊る足は痛くなかっただろうかと、かつて私たちも参加したケイさんのカンパニーのことを思う。目の前に海という別世界を感じて恐怖と安らぎを覚える。船劇場も海に浮かんではいるけれども…。寄せる波が砂利を巻き上げているのが見えた。

綾香さんと僕は水切り勝負をした。で、僕はこういうのが壊滅的に下手なのだ。けれども、勝負事は大好きな身。

“帰りのトラックの運転をかけようぜ”

と綾香さんがお茶目な口ぶりで言う。

僕は即乗る。

“良いですね。やりましょう”

太平洋の荒波に小石を投げる僕ら。小石は大抵波にのまれてしまう。綾香さんが僕の投げ方を見て笑う。どうも、変な投げ方らしい。野球にほとんど興味がなかったから仕方ない。けれども、綾香さんの方も、思いっきり投げて肩が痛くなったようだ。
春菜さんが現れて“二人は仲が良いね”と言う。僕はどんなリアクションをとれば良いかわからず、“そうかもしれません”と珍妙な答えをする。綾香さんの投げた石は結局最高三回水を切った。一方、僕はゼロ回。悔しい……。けど、仕方がない。そこに湯浅さんも登場。“流木をトラックに載せたい”らしい。“無理ですね”と綾香さんは一蹴。“水切りで勝負してた”と春菜さんが、言うと、綾香さんは“奥本くんと湯浅さんを賭けて勝負してたんだ”と冗談を言う。“やあねぇ、男って”と湯浅さんは謎のリアクション。綾香さんは顔をこちらに向けると同意を求める様に笑顔でうなずいた。僕はやっぱり真っ正直に“帰りのトラックの運転を賭けて勝負してたんですよ。負けましたけど”と答えた。みんな、笑っていた気がした。

浜辺で誰よりも生き生きしている綾香くんが印象的だった。海辺で育った人は海との親しみ度合いが違うんだなぁと思う。

宿泊施設

香南市の隣、芸西村の宿泊施設に行く。車でどんどん山に向かっていくのだが、途中ビニールハウスだらけで驚く。宿泊施設にはタオルが用意されておらず戸惑うも、結局一人一枚小さめのタオルを貸してくださることに。ご厚意に感謝。

施設には僕らだけしか泊っておらず、貸しきり状態だった。
部屋は三人部屋。綾香、松本、奥本だ。和室に布団を敷く、修学旅行で使うような部屋。松本くんは用意の良いことにテーブルタップを持ってきていた。劇団携帯と個人の携帯を持つ僕は、コンセントが多く必要なので助かった。
僕はさっさと風呂に入りたくて、ちゃっと支度をしたのだが、一番風呂は竹内さんだった。 “早いなあ”とここでも素直に感心した。実は、ここの風呂は僕にとって今回のツアーで初めての大浴場だった。そのため、のんびりと半身浴をした。夕食では、朋さんが誕生日プレゼントとして貰ったお酒と、遠藤さんが差し入れとして貰ったお酒、竹内さんがコンビニで買ったお酒が振る舞われた。久しぶりのお酒という感じだった。にぎやかな夕食。差し入れのプチトマトがとても美味しい。果物みたいな甘さだった。

夕食後は、竹内さんの部屋で飲み会。竹内さんと飲むのはもしかしたら初めてかもしれない。綾香さんのお兄さんが差し入れてくれたタコ煎餅はつまみとして好評だった。竹内さん、玉寄さん、朋さん、僕、湯浅さんはちょっとだけ顔をだし、それから、綾香さんが洗濯物の合間に顔をだし、泉さんも参加。
翌日もあるので、役者陣は早めに休む。玉寄さんが11時頃に、それから僕も12時前には自室へ戻り、気がつけば寝ていた。