『恋に狂ひて』ツアー記録 6月21日(日)神戸公演

6月21日(日)神戸公演

執筆者の文字色:吉岡 奥本 松本


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昨夜は夜中にホテルに到着したため、ホテルゲートをくぐってから人気のない真っ暗な敷地をどこまでも行かねばならない怪しい場所に感じていたが、目覚めてみると、見渡す限り林や丘や芝生が広がる、素晴らしい保養地だった。その名も「しあわせの村」。

朝8:20にホテルロビーに集合、さっそく車に乗り込み、今日の劇場「神戸アートビレッジセンター(KAVC)」へ移動。

駐車場へ車を取りに行く。乗用車の中は既に熱い。既に大変な一日が始まっているということだろうか? 朝は僕が運転。そして、助手席には春菜さん。“春菜さん、夜の運転はお願いしますね”と僕はしつこいぐらい言う。というのも、この日はKAVCのスタッフさんとの打ち上げがあるからだ。昨日は飲めなかったので、飲む気満々である。

ツアーが始まったばかりで既にこの強行スケジュール、心配になって体調をお尋ねすると、遠藤さんも政大夫さんも、昨夜は短時間で熟睡し、この上なく快調とのこと。よかった!

途中、高速の入り口を間違えるも、方向はほぼ一緒。少し遅れただけで無事神戸市街地へとついた。湊川神社のすぐ近く。神戸の繁華街“新開地”である。

車を走らせること20~30分、KAVCに到着。KAVCは、横浜で言えば日の出町や野毛辺りに類する素敵にいかがわしい界隈にある。戦前は神戸一の歓楽街だったとか。横浜と言っても裏街道に近いボートシアターとしては、結構居心地のいい町です。

劇場のビルには搬入・搬出用の巨大なエレベーターが付いており、昨日の苦労を思えば嬉しい限り。

箱馬と平台で組んだ舞台。黒パンチを敷いて予め組んで下さっていた舞台の前と後ろに張り出し舞台を付ける。このようにシンプルに木で組む舞台はなんだか癒されます。劇場の方々はとても親切で、分からないことを丁寧に教えて下さいます。

今日は舞台前中央に階段を設置でき、船劇場の花道で行っていた芝居を、舞台前を広々と使って行うことができます!細工師と愛護の若の道行きでも、観客にじっくりと人形のお顔を見せることができます。

比叡山の坊主共に追われて愛護の若が逃げる場面は、今日は客席の通路を使用。愛護の若は客席の奥に逃げ込み、坊主共は観客の間近で拳を振り上げます。

舞台組みとセッティングが終わったら例のごとく、全編駆け足の場当たり。昨日より時間があるかに思えたがやはりあっと言う間に客入れ時間になる。

今日もやはり受付へ顔をだす。昨日と同じく、小手川さんが手伝ってくれている。娘さんも連れてきてくださったそうだ。昨日はあまり物販が売れなかったので、今日こそはと思う。何としてもT-shirtを売りたい。

今回事前に集客状況がまったく知らされてなかったので、ものすごく不安を感じながら席につくと……ほぼ満席!役者よりも一足先にこの満席を見れたのは楽師の特権だなあと思う。

集客を心配していたが、開けてみたら満席。朋さん曰く「108人」(滝に飛び込んだ人数とかけたギャグです。実際の動員数とは異なります)

客席の傾斜が程よく、舞台に立つとお客さんと親しく対面している感じがする。舞台前と客席通路を使った演出にもより、お客さんと濃密な関係をとることができた。

実は、この日もちょっとしたポカをしてしまう。誰にも迷惑をかけていないポカである。正直、この劇場でこのミスをしておいて良かったというようなポカだ。それは、開始時に猿の人形のおいて置く位置を間違えたことだ。コロスでの出番が終わり、さて猿だと思ったらいない。大慌てで上手へ向かい、猿を抱えて下手へ、舞台監督の湯浅さんが裏を走っている僕の様子を見てニヤニヤしている。けれども、舞台にはきちんと間に合いしれっと猿を演じることができた。

終盤、舞台裏を急いで上手から下手へ移動する際、蛍光灯に照らされた静かな道具置場に舞監の湯浅さんがポツンと腰掛けていた。彼女は前日に足首を捻挫しながらパネルを徒歩で1階から9階にまで運び、足を悪くしている。表舞台の賑やかさに引き換え、黙々と支えてくれる裏方さんの静かな時間にはっとし、「感謝!」と思うのもつかの間、最後の108人の飛び込みに駆け出して行って、やがて終演。

お客さんはとても喜んで下さいました。遠藤さん、朋さん共に、「今までで最高の出来」とのこと。柿澤さんはすかさず「そのつもり(今までで最高のつもり)でやった!」。

今日は「極楽金魚」の影絵人形を制作した竹内英梨奈さんもフィアンセと一緒に観に来てくれている。例のごとく自己流ターバンを頭に巻いてかっこよく(怪しく?)ロビーに現れ、初演から一年と数ヶ月経って役者・演奏共々作品が成長していることを心から喜んでくれた。

春菜さんの旦那さんもかなちゃんを連れて遥々観に来て下さっていた。綾香くんのお兄さんも大阪から観に来て下さっていた。

神戸は一番楽しみにしていた。先述の竹内絵梨奈を始め、中学時代の同級生や中高大とお世話になった人が観に来てくれるからだ。友達との再会は非常に嬉しい。中学時代の同級生はしきりに感心してくれた。これをつくるのにどれだけかかったのか? これはどういうジャンルと言えば良いのか? と、驚いている様子だった。また、中高大とお世話になった人は“語り劇”であることが新鮮で非常に良かったらしい。こうして、お客さんが驚き喜んでいるのを観ると作品を作って良かったと思う。

春菜さんのお知り合いの方が、都合が悪く観劇できなかったにもかかわらずたくさんのアイスキャンディーを差し入れて下さった。

僕はお客さんへの対応、物販協力をしていた関係で、女性陣と同時にアイスキャンディーを食べた。そして、唇が切れてアイスキャンディーが血だらけになった。これは何かの罰なのだろうか?

バラシで力仕事をしている男子を差し置いて、女子を中心にアイスキャンディーに飛びつく。

竹内英梨奈さんカップルもバラシを手伝ってくれて、打ち上げにも来てくれた。

打ち上げにはKAVCのスタッフさんも来て下さり、皆晴れやかに美味しいお料理で乾杯しました。

中でも政大夫さんはことのほか上機嫌で、よく笑っていらした。きっと手を焼いて指導してきた役者連中がここに来て成長を見せていることを喜んで下さっているのだと思う。

途中から、KAVCの竹下さんと綾香さんと三人でテーブルについた。竹下さんは普段音楽をやっており、今年で31歳(だったと思う)と僕らとほぼ同年代だった。プロデュースするということも含め色々とお話をする。KAVCへ是非、また来てほしいという話を頂いた。ありがたい。

KAVCのスタッフの皆さま、本当にお世話になりました。ありがとうございました。

京都のダメージが残っており、打ち上げではやっぱりあまりテンションが上がらないでいた。しかし、竹下さんと音楽の話をした時ばかりは復活し、少々話し込んだ。竹下さんの趣味は渋く、The Bandのように落ち着いたほっこりできるようなロックをやってらっしゃるとのこと。以前から気になっていたコンプレッサーをお使いになっていて、とても良いとの情報をいただく。

ホテルへの帰路につく前に、コンビニで次の日の朝ご飯を各自購入。

劇場からホテルはさほど遠くないけれど、お店でのんびり過ごしたのでホテル到着はやはり夜中。時間は遅いけれど明日はオフなので、皆なんとなく余裕。昨晩などは湯浅さんはよほど疲れたのか、ベッドに正面から突っ伏して気を失っていたので、息ができるのか周りが心配したほどだった。

松本くんと泉くんの部屋がバリアフリーの特別な部屋になっているとのことで、数人で見学に行った。二人はキャスター付きの椅子に乗ったり押したりして仲良く遊んでいる。ほほえましい二人の世界も合わせて見学してきました。

↑こう言うとほほえましいのかもしれませんが、見る人が見れば気を悪くするようなブラックなノリだったなあと思います。ちなみに湯浅さんもMacBook充電用のACアダプタを探しにこの部屋まで来て、開口一番「靭帯切れちゃったんで〜」とか言いながらノリ良くバリアフリー体験をしていきました。ケガをネタにできるこのタフさは見習いたい。

男性俳優三人部屋では洗濯のことが話題になる。洗濯……。高校時代のギリシャツアーでも、シアターΧでのルーマニアツアーにおいても洗濯機を使わず手洗いしていた僕は手洗いするものだと思っていた。だが、コインランドリーと乾燥機の方がはるかに便利であることに気付く。そして、洗剤を忘れていたことにも気づく。仕方がない。明日の岡山はシングルだし、ホテルについたらすることは無い。明日は洗濯をしようと決める。

何人か人が集まれば、いびきをかいて寝る人も当然出てくる。僕は――京都ではいびきをかいていると言われなかったので、多分いびきはかいていないだろう(京都では綾香さんと同室だった)。そして、いびきが苦手な人もいれば、平気な人もいる。僕は後者である。だが、同室には前者もいる。いびきが苦手な人には可哀想な夜となった。

この日は公演の反響も良く、僕(松本)も泉さんもとてもテンションが高かった。何時に寝たか定かでないけど、しょうもないやり取りを延々とやっていた。楽しかったです。

今日は心にかかることもなくよく眠れそう。明日は岡山へ出発する前に、この「幸せの村」の温泉に入れるとか。楽しみだ。