「恋に狂ひて」再演を振り返って(1)

4/10~12にかけての「恋に狂ひて」再演は無事に幕を閉じました。
初日の雨、二日目夜の雪など決して全日程天候に恵まれたわけではありません。
けれども、それを無事に乗り切れたのは公演をサポートしてくれたスタッフの皆さん、
そして、観客の皆様のご理解とご協力があったためです。
あらためて、船劇場へ足をお運びくださった観客の皆様とスタッフの皆さんにお礼を申し上げます。

「恋に狂ひて」再演は、劇団にとってだけでなく、参加メンバーにとっても大きな意味を持つものでした。
彼らが、今回の試みをどのように捉え、感じているかをシリーズとしてご紹介いたします。

初回は吉岡紗矢です。


吉岡紗矢

「役は外で作れ」

恥ずかしながら、今回初めて役作りというものに取り組んだ気がしている。
それでは今まで何をしていたのかと言うと、「自分を露出していただけに過ぎない」に近い気がする。
一人語りの場合はまだしも風景や状況と共に人物を描こうとする意識により、自分への引き込みは少なく済んだ。

しかしやはりここぞという気が入ると、自分の感情というものがムクムクと前面に出てくるという性分だった。
語りと違い、体ごと演じる「役」というものにおいて、どうしても体ごとその気になるような方向性を私は持っていた。
転機はこの「恋に狂ひて」の稽古で政大夫さんの指導を受けたことによる。
演者側の心理を知り尽くした政大夫さんに、「自分に引き込んだ時におのずとなってしまう、悪い意味で役から外れた発声」を禁じられた。
その結果、「これぞ芝居」と自分が考えていた声を封じられ、「気の入らない、頼りない(と自分自身には感じられる)」今までに開発して来なかったためによく響かない部分の声で演じなければならず、非常に苦しかった。
しかしとにかく、昨年3月の初演は、自分を改造するため、政大夫さんに言われるままにやることに専念した。
結果、初演は役作りに必要な基礎の勉強発表会になってしまい、役者としての私個人に関して言えば、創造的な実りを感じることはできず、地獄のような思いであった。
この一年、初演で間に合わなかった発声の開発を急ぎ、自分の外で役を作るという実践を、演出の遠藤さんの下、一人語り「にごりえ」で研究した。
そして今回の再演を迎えるにあたって、今回こそは自分のものにしなければならないとのプレッシャーを感じていた。
今回も遠藤さん、政大夫さん、垣花さん、そして玉寄さんに、キッカケとなるアドバイスを数々いただいた。
結論から言えば、この度の再演では作品に身体的に深く踏み込むことができ、物語が自分にとってより大切なものとなり、演出の遠藤さんの求める世界を初演より体現することができ、説得力を持った(そして自分も納得できる)人物像の袖くらいはなんとか掴めたと感じている。

これまでの役者人生(というのもおこがましいようですが)でも、つたないながら何とか持っているもので見せ物にしようと奮闘してきた、そんな私を20歳の 頃から応援し続けて下さる方々がいて、本当に思い起こせば涙が出るほどありがたいのですが、今後はもっと、私の持ち味などを超えたところで人の心に届く真 の表現を目指してゆきたいし、目指してゆけそうです。
この度の再演は、私に限らず皆それぞれに表現を深めたと思います。
そのような私たちのどこまでも続くチャレンジを見守り、初演に引き続き再度足を運んで下さった方々にまず心より御礼を申し上げたいです。
記念すべき初演を観て下さった全ての方に、今後更なる成長を重ねてゆくであろう「恋に狂ひて」をまたご覧いただけたらと、勝手ながら夢想します。
ともあれ、私どもの芝居を観て下さった全ての方に感謝申し上げることは言うまでもありません。
ありがとうございました。

また、内部のこととなりますが、あらゆる才能を見せ私を教えてくれる仲間に深く感謝しています。

(冒頭を読み返して、「今回初めて役作りに取り組んだ」というのはさすがに言い過ぎでした。
「賢治讃の仮面劇」におけるカッコウや樺の木などは、仮面に助けられそれなりに役作りはしていた。
けれども今回の自覚には「初めて」と言いたくなるほどのものがあったことをお察しいただきたいので、そのままにします。
ちなみに仮面の即興レッスンに役作りの基礎があると強く感じたのも今回の出来事です)


その他のメンバーについても随時アップロードしていきます。

 

横浜ボートシアター 制作部