12月に行われる語り公演「日本間で聴く樋口一葉・芥川龍之介」開催に際し、横浜ボートシアターの語り作品を特集します。
「語り」という言葉からは、控えめな抑揚で淡々と語られる「朗読」のようなものを
思い浮かべる方が多くいらっしゃるかもしれません。
しかし、横浜ボートシアターの「語り」はもっとダイナミックなスタイルを目指しています。
観客の想像を膨らませるために、キャラクターの喜怒哀楽を的確に演じ分けるのはもちろん
、風景・情景を表す地語りですら状況に合わせて柔軟に変化させるのです。
そのため、初めて当劇団の語り作品をご覧になった方の中には、
「こんなにもダイナミックな語りは初めてだ」とおっしゃる方も少なくありません。
また、ダイナミックさと同時に、「語る」主体たる「語り手」であることを強く自覚して語ることも、
当劇団においては重要視されています。
これは、観客と地続きの位置に立っている「語り手」によって劇的世界を立ち上げていく、
というスタンスが劇団の根本にあるためです。
そういった「語り手」による劇的世界の構築、という基本的な考え方は語り作品においても
演劇作品においても変わることがありません。
(ボートシアターの仮面劇では、役者がキャラクターと同時に語り手を兼ねることがほとんどです)
以上のような当劇団の「語り」のエッセンスは、語り公演においてこそ存分に味わえることでしょう。
さて、今回ご紹介するのは宮澤賢治原作の『洞熊学校を卒業した三人』です。
宮澤賢治作品の中でもかなり残酷な部類に入るこの滑稽話は、
12月の語り公演で『にごりえ』を語る吉岡紗矢の得意作品でもあります。
洞熊学校を卒業した三人
作品紹介
赤い手長の蜘蛛、銀色のナメクジ、顔を洗ったことのない狸の三人はお互いライバル同士。
洞熊先生の下で勉強し、学校を卒業しました。
社会に出た三人は、厳しい世界をなりふり構わず生き抜こうとします。
誰もが耐え難い飢えに苦しむ中、生きるために手段を選んではいられない。
赤い手長の蜘蛛は罠をしかけ待ち伏せし、銀色のナメクジは弱いものを騙し、
顔を洗ったことのない狸は宗教を利用し、生き抜こう、相手よりも強く大きくなろうとします。
語り作品として、様々なところで上演された作品です。
歌や身体表現も取り込んだ総合的な作品に仕上がっています。
感想(2012年12月)
- 言葉と音楽と身体表現の一体化の具現が見事になされていたように思います。次回公演も楽しみにしています。
- 余分なものが削り落とされていて、不思議な迫力がありました。今の世の中のことや自分の中のもろもろなど考えさせられました。時代を先どった作品というと薄っぺらですが、ドキッとするほど今の時代を感じさせるものでした。
- この話の恐ろしさをいぜんよりまた深く考えさせられました。だましていることを見抜けるようになりたいです。声も安定し、ナメクジから特にひきこまれました。
- 一人で最初から最後まで語りをされていて、すごいなあと思いました。 10年もやっていると知ってさらにびっくりです。ひとりで 45分も演じ続けるのは大変だと思います。
- 舞台を観ながら頭の中で物語の情景を想像するというこれまでにない楽しい経験をさせて頂きました。
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