創作影絵人形劇「極楽金魚」

創作影絵人形劇「極楽金魚」好評配信中!

乙女と通じたが殺され昇天する、遠野の「おしらさま」の物語、中国朝廷での残酷な品種改良の結果生まれたとされる、グロテスクな姿の金魚「頂天眼」、身代わり人形として供養に用いられる高松の「奉公さん人形」、これらを三題噺とする着想で遠藤啄郎が創作した『極楽金魚』は、生きるために避けられぬ「犠牲」への、私たちの切なる祈りをすくいあげます。病気の子供を助けたいと願う親心、貧富の差、あらゆる関係に潜む差別が生み出す悲劇、これは現代を生きる私たちの物語です。

1960年代に書かれ、遠藤啄郎が演劇に求めた祝祭性の原点として劇化し、世界各地で絶賛された本作は、今でも色褪せることない物語の力を発揮し続けており、2012年からは影絵人形劇として上演を重ねてまいりました。

暗闇に浮かび上がる物語の影を観るという不可思議な体験を、この度は夜の船劇場を舞台に、映画風に収録しました。撮影・編集を行いましたのは、亡き遠藤啄郎の最年少の友達とその仲間が結成している、若き映像制作グループ「Shell Mound Pictures」です。

困難な時代にあって、物語が、そして祝祭劇が私たちの力になりますことを切に願っております。是非ご覧ください。

配信詳細

  • 配信料金:2000円
  • お支払い方法:銀行振込、郵便振替、PayPal
  • 視聴期間:配信ページへのURLを送付後、1ヶ月間

光と影の中にいのちがゆらぎ、哀しみを照らし出す

2012年、遠藤啄郎と横浜ボートシアターは、「極楽金魚」を影絵人形芝居として新たに創作しました。

90cm×130cm のスクリーン上で繊細に操作される素朴な皮製の人形、その光と影が織り成す世界に、物語を凝縮させます。

影絵人形を操り演じ、語るのはたった一人の女優で、劇団の中軸役者である吉岡紗矢。 語り手であると同時に、各登場人物の情動をみごとに演じ分け、貧しくも純粋な村娘おさきの数奇な運命を悲しくも美しい死と再生の物語へ昇華。繊細かつダイナミックな影絵人形遣いと言い回しで観る者を惹き付けます。

影絵人形芝居はトルコを始め、インド、中国、東南アジアなどアジア全域に広く存在する演劇のスタイルで、この作品は中でもインドネシアの「ワヤン・クリ」と呼ばれるものに影響を受け、一人の演者が語りながら同時に人形を操作しています。

語りと人形操作を一手に引き受ける吉岡紗矢

今回、影絵のデザインは、東京芸大を卒業して活躍する若手美術家・向條英梨奈が現地で影絵人形を彫る際に使う道具を特別に入手し製作。影絵人形独特の線刻の陰影やデフォルメ、朱色の金魚の色彩など、民話にふさわしいビジュアルアートを創造しました。

また、現在、劇団の座付き音楽家としても説経「愛護の若」より『恋に狂ひて』はじめ、目覚ましい活躍をみせる若手音楽家の松本利洋が作曲と演奏を担当。役者との阿吽の呼吸と変幻自在なエレクトリック・ギターの演奏で、影絵の世界をよりアクティブに、想像の地平を拡げる音世界をつむぎ出している。

向條英梨奈製作の人形

最小の演者、演奏者が遣い、語り、奏でる、ふかく豊かな日本人の深層世界。アジアの伝統演劇がもつその魔術的ともいえる手法を生かした舞台は、馬や金魚、巫女の呪術、憑き物イズナ、 生け贄、甦りのシーン…など、リアリズム演劇では到底実現できない登場人物のうごきや芝居を可能にし、無限=夢幻の想像力を喚起する。

ラスト、朝焼けの海の上で、おさきは船もろともに焼かれ、その炎の中、おさきは金魚となり、 首なし馬とともに金の雨、氷の鱗を降らせながら天へ昇っていく壮絶なシーンは、無垢の少女 ゆえ犠牲となる運命の悲劇をドラマティックに演出。

影絵人形芝居は、観る者の心や記憶の深淵を刺激する<演劇の原点>として、ファンタジックに劇的浄化をもたらします。

子どもから大人まで、幅広い世代の観客が心をときめかせる舞台に違いありません。

極楽金魚の歴史

この作品は、四国高松で今も売られている可憐な郷土人形「奉公さん」の由来話をもとに、 今から50年ほど前、遠藤啄郎によってラジオドラマとして書かれ放送されました。その後、演劇、人形劇、日舞、説経節にもなり、また児童文学書としても出版された名作です。

なかでも、舞台作品は、日本各地だけでなく、フランス、スイス、イタリア各地で上演が行 われました。1967年、代々木小劇場において、人と人形の劇「極楽金魚」を作・演出後、1975年にはフランスのナンシー演劇祭、アヴィニオン演劇祭、パリのテアトル・ド・オルセイなど 3ヶ月半にわたりヨーロッパを巡演。高い評価を受け、パリでは1ヶ月間におよぶロングラン公演が行われたのです。日本の演劇がヨーロッパに渡ってこれだけ長期的な公演を行ったのは戦後の演劇史にとって画期的な成功例といえるでしょう。

これが、当初放送作家・脚本家として出発した遠藤啄郎としての実質的な演出家デビュー作となりました。東京芸大油絵科を出た遠藤にとって、最初から演劇の関心は新劇などで主流のリアリズムの中にはなく、ビジュアルや身体、言葉、物語、音…などの要素を時空間の中でどう構築し、練り上げていくかにありました。処女作には、のちに創作される作品のほとんどの 要素が含まれていると言われますが、遠藤啄郎にとってもまた、この作品には<遠藤作品の原点>があるといえるでしょう。

1967年上演時の舞台写真

いかにも四国に伝えられてきた民話に思える創作寓話は、貧しい娘おさき、娘を買い受けた長者、難病に臥す長男、回復のためには娘を生け贄にすることを進言する山の巫女を軸に、最後は娘が憧れていた黄金の金魚「頂天眼」になって昇天する村里の悲劇をドラマティックに描き出します。そこには、私たち<日本人の哀しみの原質>にふれるような感動があり、長年にわたりさまざまな手法で繰り返し読み、描かれ、演じられてきた理由と普遍性があります。

あらすじ

四国高松に伝わる身代わり人形「奉公さん」にまつわる物語。極楽浄土の魚「頂天眼」を飼っている長者に買われ奉公人となったおさきは、老いぼれ馬の世話をし心を通わせながら、頂天眼を一目見たいと願っている。ある湿った夏に長者の息子・太郎が病に伏し、巫女たちは太郎に宿った憑き物を落とすため奇策を弄する。老いぼれ馬の首を刎ねてみたが甲斐なく、おさきに病を吸い取らせる。瀕死のおさきが見た憧れの頂天眼の姿とは…

公演の感想

  • 鳥肌が立つくらい感動しました。(20代 女性)
  • 昔々の子供の頃のスライド上映会を思い出して懐かしく、これも本当に久しぶりのたたみと障子の和室のたたずまいにも感動を覚えました。(70代 男性)
  • ちょっとこわかったです。うらがわをみて、仕組みがすごいと思いました。 (10代 女性)
  • fantastic! 影絵がロケーションと婚姻していました。流れる夜風もJawa のようでした! とても1人遣いとは思えない見事な人形遣いでした。 感動しました。 (60代 男性)
  • 「金魚」は何度見てもおもしろいです。(女性)

公演履歴

  • 2012年2月〜3月 銀座ギャラリー松林
  • 2012年3月 池袋コミュニティーカレッジ内
  • 2012年4月 西新井囲碁クラブ
  • 2012年5月 大森ケララの風II
  • 2012年6月 神奈川県立桜陽高校
  • 2012年7月 横浜ボートシアター
  • 2012年12月 横浜ボートシアター
  • 2013年3月 桐生市市民文化会館/前橋南三丁目公民館
  • 2013年7月 前橋ノイエス朝日
  • 2013年8月 中延 自由空間しおん
  • 2014年5月 「自在」南軽井沢稲葉邸
  • 2016年10月 横浜「自在」南軽井沢稲葉邸/東中野ポレポレ坐/大阪細野ビルヂング/岡山天神山文化プラザ
  • 2016年12月 女子美術大学
  • 2018年3月 横浜「自在」南軽井沢稲葉邸
  • 2018年4月 福井田烏蔵シアター
  • 2018年9月 大森アートポジション
  • 2019年5月 大森アートポジション/福井田烏蔵シアター
  • 2020年10月 横浜ボートシアター(上演+ライブ配信)